日本大百科全書(ニッポニカ) 「スキナー」の意味・わかりやすい解説
スキナー
すきなー
Burrhus Frederic Skinner
(1904―1990)
現代アメリカの代表的心理学者。ペンシルベニア州生まれ。ハーバード大学で学位を取得後、ミネソタ、インディアナ大学を経て、1948年ハーバード大学教授となり、1958年来、終身教授。新行動主義Neo behaviorismのリーダーの一人。1930~1940年ごろ、動物実験による基礎研究から実験的行動分析experimental analysis of behaviorを確立した。この方法はパブロフの古典条件づけの原理に影響を受けながら、生活体の自発的行動の条件づけを扱うものであり、オペラントoperant条件づけと称される。古典条件づけが反応と独立に刺激を呈示することに重点を置くのに対し、オペラント条件づけは反応と強化の随伴関係contingencyによる行動の形成・維持を扱うもので、彼は強化のさまざまなスケジュールによる定常的な反応率の相違に関する精細な研究を展開した。また、この目的のため、迷路実験などの従来の動物実験を批判し、単純・明確な操作を可能にするスキナー箱を考案、ユニークな実験を行った。
1950年以後、この成果にたって人間の学習行動、言語条件づけなどについて研究を進め、さらにティーチング・マシンの開発によるプログラム学習、行動薬理学、行動修正(変容)behavior modificationを利用した臨床技術、行動療法など多方面にわたって業績を残している。主著に『The behavior of organism』(1938)、『Science and human behavior』(1953)、『Verbal behavior』(1957)、また『行動工学とはなにか』About behaviorism(1974)などがある。
[小川 隆]
『犬田充訳『行動工学とはなにか』(1975・佑学社)』