学習理論には、学習の原因や仕組みを説明する心理学の理論と、犯罪・非行の原因や仕組みを説明する社会学の理論がある。
心理学の学習理論は、S-R理論と認知理論に大きく分けられる。S-R理論は、刺激stimulusに結び付いて反応responseが起こると考える理論で、人間や動物の行動に関する条件づけconditioningの基礎理論となっている。たとえば、「パブロフの犬」といわれる古典的条件づけの実験では、犬に食物を与える前にメトロノームの音を聞かせ、それを繰り返すと、メトロノームの音が聞こえただけで唾液(だえき)が分泌されるようになる。つまり、犬はメトロノームの音を食物が出てくる合図であると学習するのである。条件づけを利用した心理療法に、行動療法がある。
また、認知理論は、五感の知覚から得られた情報が、それまでの学習に影響を受けて認知されると考える理論である。たとえば、ラベンダーの香りをトイレの芳香剤で学習すると、本物のラベンダーの香りからトイレを連想するようになる。つまり、ラベンダーの香りをトイレの臭(にお)いと認知するのである。認知を変えることで恐怖心や嫌悪感を改善する心理療法を認知療法という。なお、行動療法と認知療法の特長をあわせた認知行動療法もある。
社会学の学習理論は、犯罪や非行などの逸脱行動の原因は先天的な異常にあるのではなく、後天的に学習されると考える理論群である。精神病質や社会解体を犯罪原因とみなす立場を否定し、それまでの犯罪研究に一石を投じた。代表的な学習理論に、アメリカの犯罪社会学者のサザランドEdwin H. Sutherland(1883―1950)が提唱した分化的接触理論がある。「犯罪は学習される」「その学習の主要な部分は、親密な私的集団のなかで行われる」といった九つの命題で構成され、犯罪の文化に接することで人々は犯罪を学習するという点に着目している。学習理論は性善説を前提とするため、性悪説を前提とする統制理論と対立する見解がある。
[田中智仁]
『E・H・サザランド、D・R・クレッシー著、平野龍一・所一彦訳『犯罪の原因 刑事学原論1』(1964・有信堂)』▽『坂野雄二著『認知行動療法』(1995・日本評論社)』▽『高橋治久・堀田一弘著『学習理論』(2009・コロナ社)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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