日本大百科全書(ニッポニカ) 「プログラム学習」の意味・わかりやすい解説
プログラム学習
ぷろぐらむがくしゅう
programed learning
従来、ティーチング・マシン(テキストやシートも含む)を用いて個別学習を進めていく教授・学習方法といったとらえ方をされていたが、今日では、「視聴覚教育、マルチメディアと結び付き、さらに教育工学、とくにCAI(Computer Assisted Instruction)と合体して、その教授設計の中心的位置を占め、広く教育目標を効果的に達成するための計画的な方法」といった広義の概念になっている。
[岡東壽隆]
リニア・タイプのプログラム
プログラム学習をもっとも発展させたのは、アメリカの心理学者スキナーである。彼はオペラント条件づけの原理を学習に適用し、ティーチング・マシンと結び付け、学習目標達成が効果的・効率的に行われる理論を構築し、学習プログラムを作成した。それは、リニア・タイプlinear typeのプログラムとよばれるが、次のような原理からなっている。
学習目標に到達するためには、学習教材を小刻みにして連続的に提示すること(スモール・ステップの原理)。その際、学習当初は手掛りとヒントを与え、学習の進行とともにそれらを減少させていく(キューイングcueingとフェイディングfading)技法をとり、学習過程全体を通じて、学習者に実際の行動をとらせるなどして積極的な学習参加を求める(積極的反応の原理)。学習者の反応はただちにその正誤が知らされ(直後強化の原理、即時確認の原理)、正答の連続であることによって(正反応の定着)、所期の目標に達するという構造をとる。学習者には学習速度に個人差があるが、自己のペースで学習を進めていくことができ(自己ペースの原理)、さらに、学習結果によってプログラム自体を検証・改善していくようになっている。
[岡東壽隆]
枝分れ型プログラム
これに対し、基本的な原理はほとんど変わらないが、同じくアメリカの心理学者クラウダーN. A. Crowderの枝分れ型プログラムがある。スキナーの場合、学習過程における個人差が学習速度だけに帰せられているのに対し、学習者の先行学習とか特性とかに応じて学習の道程が異なることに注目し、学習者の反応に応じ、次に提示されるプログラムが異なるよう設計されている。したがって、正反応の連続でなく、誤反応も許容するプログラムになっている。
[岡東壽隆]
その他
そのほかに、学習者の学習過程は、以上のような等質的な連続ではないとする考え方もある。つまり段階的な発展であるとして(知的行為の多段階形成論)、〔1〕行為の準備、〔2〕外的物質的行為、〔3〕行為の外言化、〔4〕内言による内在化、〔5〕一般化した能力の形成、の各段階を固めていくようなプログラムの方法を主張する立場もある。
[岡東壽隆]
『中野照海編著『教育学講座6 教育工学』(1979・学習研究社)』▽『堀内敏夫編著『プログラム学習とTM』(1972・大日本図書)』