改訂新版 世界大百科事典 「テンニンチョウ」の意味・わかりやすい解説
テンニンチョウ (天人鳥)
pin-tailed whydah
Vidua macroura
スズメ目ハタオリドリ科の鳥。全長約12cm,生殖羽の雄の尾羽を含めた全長は約32cm。雌雄異色。雄の生殖羽は頭上と背から尾までが黒く,後頸(こうけい),顔,腹は白く,翼に白い大斑がある。くちばしが赤い。特異なのは長い尾で,中央の4枚が伸長して16~20cmにもなる。雄の非生殖羽と雌は黄褐色で,暗色の斑点が散在している。サハラ以南のアフリカに広く分布し,サバンナや農耕地にすむ。食物は種子食である。繁殖期になると,雄は地上ややぶの上にいる雌の上で飛びながら変わった求愛行動をする。空中停止を含めて雌の上を飛びながら翼動に合わせて長い尾を高くあげ,ぴくぴくと動かす。そして盛んにさえずる。特定のつがいはつくられないといわれているが,生活史はまだ十分に解明されていない。小群では,いつでも1羽の完全生殖羽の雄と,それを取り巻く1ダース余の雌と生殖羽にならない雄が見られる。巣は自分でつくらず,カエデチョウ科やウグイス亜科セッカ属の鳥の巣に托卵し,雛を育てさせる。姿のよさのために飼鳥としてときどき輸入される。じょうぶな鳥で飼いやすいが,雄は闘争性が強く,他の小鳥といっしょには飼えない。尾が長くなるので高めの止り木を取り付ける必要がある。
執筆者:中村 登流
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報