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托卵 たくらんbrood parasitism

知恵蔵の解説

托卵

自分の産んだ卵を他の個体に育てさせる習性で、育てる方を仮親と呼ぶ。カッコウなどの鳥類でよく知られるが、ナマズなどの魚類にも例がある。托卵する鳥は仮親のに卵を産み込むと同時に仮親の卵を一部除去し、孵化した雛は仮親の卵を巣外に放り出す。仮親も産み込まれた卵を除去するなどの対抗措置を発達させるため、托卵される卵は仮親の卵によく似ているものが多い。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

托卵【たくらん】

鳥が繁殖に際し自分で営巣せず,他の鳥の巣に卵を産んで抱卵・育雛(いくすう)を任せること。ホトトギス科,ミツオシエ科,ムクドリモドキ科,ハタオリドリ科,カモ科の鳥に見られる。
→関連項目アオジウグイス(鶯)カッコウ(郭公)コルリツツドリホトトギス(杜鵑/不如帰)モズヨシキリ

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世界大百科事典 第2版の解説

たくらん【托卵 brood parasitism】

自分では巣をつくらずに,ほかの種の鳥の巣に卵を産みこみ,その後の世話をその巣の親鳥にまかせてしまう鳥の習性。ホトトギス科,ミツオシエ科,ムクドリモドキ科,ハタオリドリ科,ガンカモ科の鳥に見られる。この習性について最もよく調べられているのは,ホトトギス科のホトトギス属の鳥,特にカッコウである。これらの鳥では,雌は自分の卵を1個産みこむと同時に,巣の中の卵を1個くわえとり,飲みこむか捨てるかしてしまう。

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大辞林 第三版の解説

たくらん【托卵】

鳥が、他の鳥の巣に卵を産み、抱卵・育雛いくすうを托す習性。日本では、ホトトギスやカッコウなどにこの習性が知られている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

托卵
たくらん
brood parasitism; nest parasitism

同種あるいは他種の鳥の巣へ卵を産み,その巣の持ち主に抱卵,育雛をさせる習性。同種の場合には種内托卵という。托卵される鳥は仮親や宿種と呼ばれる。托卵する鳥は自分で育雛をする種とまったくしない種がある。種内托卵の場合は,ほとんどの種の鳥が育雛をするが,ほかの個体の巣に卵を産む雌はしない場合もある。他種の巣に卵を産み,育雛を托卵だけに頼っている種の鳥は,巣もつくらない。托卵をする鳥としてはカッコウが有名だが,140種ほどいるカッコウの仲間でも,半数以上の種は托卵をせずに自分で巣づくりから育雛まで行ない,そのなかの少数はときには托卵もする。日本ではカッコウのほかツツドリジュウイチホトトギスが托卵性である。育雛をしない托卵性の鳥にはカッコウ類のほかにコウウチョウ類,ミツオシエ類,カエデチョウ類と,南アメリカにすむカモ類の一種ズグロガモ Heteronetta atricapilla がいる。他種に托卵する鳥は仮親とする種が決まっていて,産み落とした卵も仮親の卵によく似ていることが多い。同種でも生息地が異なると托卵する種が異なり,卵の色が異なる場合もある。孵化したはカッコウ類ではその巣にあるほかの卵を巣から外にほうり出して,ミツオシエ類では先がかぎ状になったで巣内のほかの雛をかみ殺して,どちらも仮親の育雛を独占する。コウウチョウ類などは仮親の雛といっしょに育てられる。ズグロガモは離巣性で,雛は孵化するとすぐに独立する。種内托卵の場合は,ほかの個体の雛も仮親の雛といっしょに育てられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

托卵
たくらん

鳥類が繁殖に際し、営巣、抱卵、雛(ひな)の世話を自分で行わずに、ほかの鳥(仮親)に任せる習性をいう。托卵鳥は、日本にはホトトギス科のホトトギス、カッコウ、ツツドリ、ジュウイチの4種が繁殖している。このような習性をもつ鳥類は、世界ではホトトギス科、ムクドリモドキ科、ミツオシエ科、ハタオリドリ科、カモ科の約80種であり、現生の鳥類全体で約1%にすぎない。托卵習性がこのようにいくつもの科にまたがることは、この習性が独立に何回も生じたことを示唆しているが、托卵習性の起源と進化についてはまだ完全にはわかっていない。
 ホトトギス類の卵は、仮親の卵に色や模様がよく似ている。たとえば、ホトトギスは仮親であるウグイスと似たチョコレート色の卵を産み、ジュウイチは仮親のコルリと似た青色を帯びた卵を産む。さらに、数種類の仮親に托卵するカッコウやツツドリでは、同じ種でも仮親の違いに応じて異なる色の卵を産む系統があることが知られており、ホトトギスのいない北海道では、ツツドリがウグイスの巣にチョコレート色の卵を産み込むことが1984年(昭和59)発見された。
 托卵鳥は、仮親の留守を見計らい、その巣から卵を1個または数個くわえ出し、数秒の間に自分の卵を1個産み込む。その卵は普通、仮親の卵より先に孵化(ふか)し、かえった雛は背中のくぼみに仮親の卵や雛をのせて巣外へほうり出す。ミツオシエの雛は、鉤(かぎ)状の嘴(くちばし)で仮親の雛を殺してしまい、巣を独占した雛は仮親から給餌(きゅうじ)を受けて大きくなる。しかし、なかにはアメリカジカッコウのように、仮親の雛と巣内でいっしょに育つものもある。[山岸 哲]

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世界大百科事典内の托卵の言及

【寄生】より

…一方腸内寄生者は,宿主の身体そのものではなく,吸収以前の消化産物を栄養としているが,これは宿主の食物を横取りしていることになる。それをも寄生というのであれば,リカオンの獲物を横取りするブチハイエナや海鳥から魚を横取りするトウゾクカモメ,カッコウなど托卵性(英語ではbrood parasitism,つまり抱卵寄生という)の鳥,アリの巣に住んで貯蔵食料を盗む甲虫,さらにはアリの巣に運び込まれて養われる甲虫やシジミチョウ類の幼虫,奴隷狩りをして他種のアリに食物採集や子どもの世話をさせるサムライアリ,その他さまざまな例がここに入ることになる。それらに対して社会寄生・労働寄生などの概念が提案されている。…

【カッコウ(郭公)】より

…ホトトギス目ホトトギス科の鳥(イラスト)。托卵(たくらん)性の鳥としてもっともよく知られている。全長約35cm,体上面と胸は灰色,腹は白地に黒帯がある。…

【卵】より

…穴の中に産まれる卵には白いものが多く,地上に産まれる卵には褐色系のものが多いという傾向はあるが,それ以外の卵の色や模様にどういう意味があるのかはよくわかっていない。ただし,托卵をするホトトギス類の中には,托卵相手の鳥と同じ色や模様の卵を産むものが多い。これは,似た色の卵を産みこまないと,宿主の鳥に排除されてしまうためである。…

【ツツドリ(筒鳥)】より

…林の中で鳴くことが多いので,姿を見ることは少ない。ほかのホトトギス類と同様,托卵の習性をもち,おもにセンダイムシクイなどのムシクイ類の巣を選んで托卵する。卵は白地に褐色斑がある。…

※「托卵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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