日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディレーン」の意味・わかりやすい解説
ディレーン
でぃれーん
John Thadeus Delane
(1817―1879)
イギリスの新聞編集者。ロンドンに生まれ、1839年オックスフォード大学を卒業。在学中から記者修業をしたあと、『タイムズ』紙に入社して議会報道を担当、1841年、名編集長バーンズの死後、23歳で編集長となった。自ら社説を書くことは少なかったが、有能な記者を集めて指導することに優れ、政界の有力者と親しく交わって、穀物法の廃止をはじめ、多くの特ダネを報道することに成功した。自由主義者ではあったが、党派に偏せず、むしろ調停役をつとめた。クリミア戦争に際しては、戦争遂行の不手際を暴露して政府を攻撃、内閣を交替させるに至った。電報が普及した時代であったが、アレクサンドリア―ロンドン間に専用便を設けて通信網を向上させもした。『タイムズ』がイギリスばかりでなく世界の政治家から注目されるようになったのはこのころであった。
[伊藤慎一]