日本大百科全書(ニッポニカ) 「デウカリオン」の意味・わかりやすい解説
デウカリオン
でうかりおん
Deukalion
ギリシア神話の人類の祖。プロメテウスの子で、フティア地方を統治していた。また、妻ピラはエピメテウスとパンドラとの子で、2人は夫婦そろって行いの正しい、神々に敬虔(けいけん)な人柄であった。ところが、この時代(青銅時代)の人間の無法を怒ったゼウスが人類を大洪水で滅ぼそうとしたため、夫婦はまえもってプロメテウスから教えられたように箱舟をつくり、必需品を中に積み込んでそれに乗り込んだ。そして九日九夜水上を漂い、パルナッソスに流れつくが、雨がやんだので箱舟から降りると、自分たちのほかは全人類が滅びてしまったことを知る。そこで女神テミスに人類の再生を問うと、母の骨を歩きながら背後に投げよとの神託があったので、母なる大地の骨、つまり石を投げたところ、デウカリオンの石からは男が、ピラの石からは女が生まれたという。
[伊藤照夫]