翻訳|debridement
皮膚潰瘍(かいよう)や褥瘡(じょくそう)(床ずれ)などにおいて、壊死(えし)物質や細菌感染組織などを物理的に除去し、治癒を促進させるための手技。いいかえれば潰瘍表面をきれいにする方法である。創面切除、またデブリードマンを略してデブリともよばれる。褥瘡や皮膚潰瘍の局所環境を整え、病変を速やかに治癒に導くために実施される。
[安部正敏 2020年5月19日]
不要な組織を除去することが目的であるので、外科的に切除する方法が有名であるが、それ以外にもドレッシング材(患部を覆う医療用材料)やタンパク分解酵素、生物、ガーゼを用いる方法などが存在する。
外科的デブリードマンは、除去すべき組織周囲を局所麻酔し、メスや電気メスを用いて不要組織を摘除するものである。切除範囲が広範な場合には全身麻酔を要することもある。手術終了時には十分に止血がなされていることを確認する。本法は確実に不要組織の除去がなされるものの、在宅医療においては医療機器や医療資源の問題、また術後の出血の懸念から、実施が困難な場合も多い。また、抗凝固薬や血流改善薬などを服薬中の患者には禁忌(実施してはならない)である。
ドレッシング材によるデブリードマンでは、ドレッシング材自体がもたらす自己融解作用を利用する。ハイドロジェルなどが用いられる。
タンパク分解酵素によるデブリードマンでは、ブロメラインなどの薬剤が用いられる。本剤はアルギニンとアラニン、アラニンとグルタミンのアミノ酸結合を加水分解することでタンパク質を分解することを応用したもので、病変部の壊死組織を分解し除去することで潰瘍面の清浄化をもたらす。本剤を応用した外用薬(ブロメライン軟膏(なんこう)など)は、強力に水を吸収する作用も有するため、細菌感染巣のデブリードマンにも有用である。
生物によるデブリードマンは、いわゆるウジ虫を応用した方法である。医療用に無菌化されたヒロズキンバエの幼虫を創傷表面で実際に生かしておくことで、虫が壊死組織を食べることでデブリードマンが可能となる。本法はマゴットセラピーともよばれ、日本では2004年(平成16)に岡山大学で初めて実施されたが、2020年(令和2)現在のところ保険適用外治療となっている。
ガーゼによるデブリードマンは、近年では湿潤療法がメインになったこともあって、実施される頻度が減ったが、特定の壊死物質や細菌感染組織をターゲットにするのではなく、不要組織を区別なく一塊として除去する、いわゆる非特異的デブリードマンには有効かつ安価な方法である。湿らせたガーゼを潰瘍表面に貼付(ちょうふ)し、その上に乾いたガーゼを置くことで滲出(しんしゅつ)液を吸収する。さらにガーゼ交換時に壊死組織が物理的に除去される。
これらの方法により、創傷の治癒を阻害する因子である壊死物質や感染組織を除去することで治癒期間が短縮できるが、患部が踵(かかと)である場合、局所の血流を十分に評価しないままデブリードマンを行うと、逆に傷が悪化拡大するため注意を要する。
[安部正敏 2020年5月19日]
デブリードマンにおいては、外科的デブリードマンが速く確実な方法であるが、近年、高圧水流や超音波によるデブリードマンが注目されている。これらは、メスを用いた従来の外科的デブリードマンより低侵襲(苦痛が少ない方法)であり、在宅医療現場での有用性が期待されている。
[安部正敏 2020年5月19日]
『市岡滋監修、安部正敏・溝上祐子・寺師浩人編、坂本奈津紀他著『創傷のすべて――キズをもつすべての人のために』(2012・克誠堂出版)』▽『安部正敏編著『たった20項目で学べる 褥瘡ケア』(2014・学研メディカル秀潤社)』▽『寺師浩人著「重症虚血肢の診断と治療(2)デブリードマン」(『日本血管外科学会雑誌』27巻2号所収・pp.77~79・2018・日本血管外科学会)』
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