日本大百科全書(ニッポニカ) 「トウゴロウイワシ」の意味・わかりやすい解説
トウゴロウイワシ
とうごろういわし / 藤五郎鰯
[学] Hypoatherina valenciennei
硬骨魚綱トウゴロウイワシ目トウゴロウイワシ科の海水魚。トオゴロイワシともいう。新潟県以南の日本海、青森県以南の太平洋、西太平洋、インド洋に広く分布する。鱗(うろこ)が粗雑で硬く、体に密着して離れないことから、地方によりトンゴロ、カワイワシ、コワイワシなどとよばれる。ボラに近縁であるが、それより細長く、全長16センチメートルの小魚である。体側に1本の広い銀白色帯(ホルマリン固定後は黒色)が縦走し、第1背びれが小さく、胸びれが鰓孔(さいこう)上部の後方に位置し、側線がない。日本から5種が報告されているが、肛門が腹びれの基部と後端の間に開くことで他種と区別できる。日本では6~10月の間、内湾や入り江などに群れをなして泳ぐ。動物性プランクトンを主食とする。ほとんど産業利用価値がない。
北アメリカのカリフォルニア沿岸に生息する同じ科のグルニオンLeuresthes tenuisは、春から夏にかけて夜間高潮時に砂浜へ群遊し、砂の中に卵を産み付けるので有名である。この卵は10日前後砂の中で発育し、次の高潮のときに孵化(ふか)して海中へ運ばれる。
[落合 明・尼岡邦夫]