トウヤクリンドウ(読み)とうやくりんどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トウヤクリンドウ」の意味・わかりやすい解説

トウヤクリンドウ
とうやくりんどう / 当薬竜胆
[学] Gentiana algida Pall.

リンドウ科(APG分類:リンドウ科)の多年草花茎は高さ8~15センチメートル。根出葉は花茎の腋(えき)に集まってつき線状披針(ひしん)形、茎葉は対生し、披針形。8~9月、黄白色を帯びて緑色斑点(はんてん)がある筒状の花を上向きに開く。高山帯の風衝草原や礫地(れきち)に生え、中部地方以北の本州、および朝鮮半島、中国、シベリア千島カムチャツカ、北アメリカに分布する。かつて全草を乾燥して胃腸薬としたので当薬の名があり、葉は著しく苦い。北海道には花が大形の変種クモイリンドウが分布する。

[高橋秀男 2021年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トウヤクリンドウ」の意味・わかりやすい解説

トウヤクリンドウ(当薬竜胆)
トウヤクリンドウ
Gentiana algida; gentian

リンドウ科の多年草。クモイリンドウともいう。北半球寒帯に広く分布し,日本では中部地方以北の高山に生える。倒披針形の長い根出葉を叢生し,花をつける茎は直立して,高さ 20cmほどになる。茎につく葉は披針形で対生し,ほとんど柄がない。夏に,茎の頂部に淡黄色で青緑色の斑点をもつ鐘状花を2~3個つける。トウヤク (当薬) はセンブリ (千振)別名であるが,本種も乾燥してセンブリ同様に生薬として用いるためこの和名がある。

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百科事典マイペディア 「トウヤクリンドウ」の意味・わかりやすい解説

トウヤクリンドウ

リンドウ科の多年草。本州,北海道の高山にはえ,千島,樺太にも分布。葉は披針形で対生する。8〜9月,高さ10〜20cmの花茎の頂に2〜5個の花をつける。淡黄色の花冠は緑色の斑点があり,筒形で長さ4〜5cm。薬用とされたため当薬の名がある。
→関連項目高山植物

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世界大百科事典(旧版)内のトウヤクリンドウの言及

【リンドウ(竜胆)】より

…形態変化が多く,地域変異品にホソバリンドウ,ツクシリンドウ,キリシマリンドウ,クマガワリンドウなどの名がつけられている。 日本産のリンドウ類は,リンドウ属,タカネリンドウ属,チシマリンドウ属,サンプクリンドウ属の4属に分けられ,リンドウ属Gentiana(英名gentian)には,高山性のオヤマリンドウG.makinoi Kusn.,エゾリンドウG.triflora Pall.var.japonica (Kusn.) Hara,花が淡黄色のトウヤクリンドウG.algida Pall.(イラスト),高山性で小型のミヤマリンドウG.nipponica Maxim.,また一,二年草で草地に生えるフデリンドウG.zollingeri Fawc.(イラスト)やコケリンドウG.squarrosa Ledeb.,湿地に生育するハルリンドウG.thunbergii (G.Don) Griseb.(イラスト)などがある。 トウリンドウは根茎および根に苦味配糖体ゲンチオピクリンgentiopicrine,ゲンチアニンgentianineなどの苦味成分を含み,漢方では竜胆(りゆうたん)とよばれ,苦味健胃薬として用いられ,また他の生薬と配合して,解熱,肝炎,咽喉炎,中耳炎,高血圧,尿道炎などにも用いられる。…

※「トウヤクリンドウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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