日本大百科全書(ニッポニカ) 「トタテグモ」の意味・わかりやすい解説
トタテグモ
とたてぐも / 戸立蜘蛛
蟷
trap-door spider
節足動物門クモ形綱真正クモ目のトタテグモ科、カネコトタテグモ科などの、おもに地中生活をし、住居の入口に扉をつけるクモの総称である。
日本のトタテグモ科の代表種はキシノウエトタテグモLatouchia typicaで、東北地方の中央部以南九州まで分布する(四国は不詳)。地中に縦穴を掘り、入口に蝶番(ちょうつがい)式の片開き戸をつける。体長は雌の最大が15ミリメートルで、雄はそれより一回り小さい。頭胸部は褐色、腹部は黒紫色の地に白い矢筈(やはず)状の斑紋(はんもん)がある。人家の縁の下、寺院の境内の踏み石のきわ、石垣の間などでみられる。分布は広いが、局地的に多産する。また、キノボリトタテグモUmmidia fragariaは地中から地上に進出したもので、苔(こけ)むした古木(クス、スギなど)の樹皮の割れ目に30ミリメートルぐらいの袋状の住居をつくり、入口にはやはり扉をつける。ときには石の上や石と地面の土の間に営巣することもあるが、上あごに穴を掘る太い棘(とげ)があるのは地中生活の名残(なごり)である。北海道を除く全国に広く分布する。琉球(りゅうきゅう)諸島には、このほかにオキナワトタテグモ、ミヤコジマトタテグモがいる。カネコトタテグモ科のクモは、一般に住居は横穴式で入口の扉は両開き戸である。形態的には頭胸部の中窩(ちゅうか)が横向きであるのが特徴。カネコトタテグモは本州(東北、関東、中部、近畿の各地方)に分布し、エゾトタテグモは北海道だけに産する。この2種は北アメリカの近縁種とともに南下した残留種として注目される。キムラグモ科もトタテグモとして扱われることがある。
[八木沼健夫]