改訂新版 世界大百科事典 「トタテグモ」の意味・わかりやすい解説
トタテグモ
trap-door spider
カネコトタテグモ科Antrodiaetidaeとトタテグモ科Ctenizidaeに属するクモの総称。ともに地中生活をしている。住居巣の入口に戸ぶたをもっているところからこの名が生まれたものと思われる。カネコトタテグモ科のものは両開き,トタテグモ科のものは片開きの戸ぶたである。この戸を細くあけ,餌の昆虫などがくるのを待ち,前を通ったときに穴からすばやくとび出しつかまえる。体長は雌10~15mm,雄8~10mm。カネコトタテグモ科は日本と北アメリカだけに分布し,日本ではカネコトタテグモAntrodiaetus roretziとエゾトタテグモA.yesoensisの2種が知られている。トタテグモ科は世界に広く分布し,日本では,ミヤコジマトタテグモLatouchia japonica,オキナワトタテグモL.swinhoei,キシノウエトタテグモL.typica,キノボリトタテグモUmmidia fragariaの4種が知られている。カネコトタテグモは日本各地に分布し,崖地,林の周辺にすむ。住居の穴は30cmに達する深いものもいる。キシノウエトタテグモは九州,本州に広く分布している。穴の深さが4cmほどで,クモタケIsariaに寄生されやすい。これはIsaria菌の子実体の長さが6cm前後なので,深い穴をつくるクモでは子実体が光と外気に触れることができないために穴の浅いキシノウエトタテグモがねらわれるらしい。キノボリトタテグモは,樹幹や石壁などに袋状の巣をつくり入口に片開きの戸ぶたをもつ。
執筆者:萱嶋 泉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報