トラジャ(読み)とらじゃ(英語表記)Toraja

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラジャ」の意味・わかりやすい解説

トラジャ
とらじゃ
Toraja

インドネシア共和国スラウェシ島中央部の内陸山岳部に住む、オーストロネシア語系の言語分類に属する民族集団。トラジャの名称は、海岸部に居住するブギス人が、塩・海産物を求めて山から降りてくる人を「山の人」とよんだことに由来している。現在トラジャ人は、スラウェシ島中央部をはじめ、マカッサル、ジャカルタ市などの都市部にも広く居住しているが、トラジャ固有の慣習法をもち、トラジャ人としての民族意識をもつ、南スラウェシ州タナ・トラジャ県に住む人々をさすのが一般的である。

 タナ・トラジャ県は面積3631平方キロメートル、人口は、若干の中国人などの非トラジャ人を含めて約33万人である。この地域は、小都市ランテパオの盆地状平地を除くと、海抜700~2000メートル余りの山岳地形である。それゆえ、トラジャ人は棚田での水稲耕作をおもな生業としている。ほかにコーヒー、丁子(ちょうじ)なども換金作物として栽培している。

 宗教は、20世紀初めに布教が始まったキリスト教徒が約80%と多数を占めるが、アルックトドロとよばれるトラジャ固有の伝統的宗教(精霊信仰)を信ずる人々も存在する。ちなみにイスラム教などの他宗教は数パーセントで少数である。

 トラジャ人の慣習を特徴づける社会制度には、トンコナンとよばれる居住家屋の創設者を中心に男系・女系の双方の系譜をたどって形成する親族集団がある。この集団は相互扶助的関係をもち、連帯感が強い。

 また、トラジャの伝統的儀礼体系は死の儀礼であるランブ・ソロ(下降する煙の意)と、生の儀礼すなわち豊穣(ほうじょう)儀礼マブア、悪霊祓(ばら)いの儀礼、建築儀礼などのランブ・ツカ(上昇する煙の意)に分類されている。とくにマブアの儀礼は、親族集団の豊穣、繁栄を祝う儀礼であるが、また葬送儀礼であの世へ送った故人祖霊をこの世に呼び戻す再生儀礼でもある。

 これらの儀礼過程で、地域コミュニティーのまとまりや、親族関係上重い意味をもっている行為は、水牛、ブタ、ニワトリをカミへの供儀としてと畜し、人々の間で会食や肉の贈答を行うことである。この肉の交換システムは、トラジャ人の連帯感を強めるとともに、トラジャ社会の統合に大きな役割を果たしている。

[秋野晃司]

『内堀基光・山下晋司著『死の人類学』(1986・弘文堂)』『秋野晃司著「死と再生のドラマ」(『季刊民族学』No.60所収・1992・千里文化財団)』『M. Frank LebarEthnic Groups of Insular Southeast Asia, Vol.1(1972, Human Relations Area Files Press, New Haven)』『H. Nooy-PalmThe Sa'dan Toraja(1979, Martinus Nijheff, the Hague, the Netherlands)』

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百科事典マイペディア 「トラジャ」の意味・わかりやすい解説

トラジャ

スラウェシ島に住むプロト・マレー系の人びと。トラジャとは内地人,山地人の意。巨石土台とした杭上(こうじょう)住居に住む。階段式の水田耕作を行い,水牛,牛の飼育も行う。死者崇拝が発達し,精霊信仰が強い。トラジャ語はインドネシア語派に属する。
→関連項目スラウェシ[島]

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とっさの日本語便利帳 「トラジャ」の解説

トラジャ

業界紙『トラベルジャーナル』の略。同系列の、旅行関係の専門学校もあり、業界には出身者が少なくない。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

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