トリノアシ(その他表記)Metacrinus rotundus

改訂新版 世界大百科事典 「トリノアシ」の意味・わかりやすい解説

トリノアシ
Metacrinus rotundus

ウミユリ綱ゴカクウミユリ科の棘皮(きよくひ)動物。この種類は,1881年に相模湾水深130mの海底から初めて採集され,新種とされたものである。和名は冠の各腕の表面がニワトリうろこのついた脚によく似ているところからつけられた。相模湾,駿河湾紀伊水道などに分布し,水深100~500mの海底にすむ。体は長さ30~50cmの茎の上部に多くの腕からなる冠をつける。茎の断面は正五角形で,12節ごとに関節があり,おのおのの関節から5本の巻枝を輪生する。巻枝は40~45個の小節よりなる。冠は美しいピンクで,中心にある5個の扯板(しばん)と呼ばれる骨板がそれぞれ3~4回分岐して40~50本の腕になり,各腕に多くの羽枝が生じている。口と肛門は冠の上側に開いている。雌雄異体。冠の腕は基部から離れやすく,採集して空気中にさらすとまもなくばらばらになる。近縁種にイボウミユリM.interruptusやシロウミユリM.nobilisなどがある。ウミユリの仲間は古生代から出現した動物で,〈生きている化石〉といわれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリノアシ」の意味・わかりやすい解説

トリノアシ
とりのあし / 鳥の肢
[学] Metacrinus rotundus

棘皮(きょくひ)動物門ウミユリ綱ゴカクウミユリ科に属する海産動物。「生きた化石」とされる有茎ウミユリ類のうち、日本近海でもっとも普通にみられる種。名称はニワトリの足を逆さにしたような外観にちなむ。体長40~50センチメートル。上部に花のように開いた50本ぐらいの腕があり、その下に巻き枝の輪生した長い茎がある。下端は採集時にちぎれてしまい不明とされるが、もともと根部がなく、巻き枝で他物に絡まっている可能性が強い。淡い褐色、紅色、または黄色みを帯び、濃淡の縞(しま)のあるものが多い。本州中部から東シナ海に至る水深100~500メートルの海底に産する。

[重井陸夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリノアシ」の意味・わかりやすい解説

トリノアシ
Metacrinus rotundus

棘皮動物門ウミユリ綱ウミユリ目ゴカクウミユリ科。長さ 30~50cmの丸みを帯びた五角柱状の茎の上部に,羽状に分れた腕から成る冠をつける。茎には 11~12節ごとに関節があって,そこからそれぞれ5本ずつ巻枝を輪生する。巻枝は 40~45節に分れている。冠は,その中心に5個のし板があり,これが3~4回分岐して腕板をつくり,さらにそれぞれの腕板が羽枝を生じたものが全体として冠状になったもので,生時は桃色を呈している。雌雄異体。相模湾,駿河湾,紀伊水道などの水深 100~500mの海底から得られる。

トリノアシ(鶏の脚)
トリノアシ
Acanthopeltis japonica

紅藻類テングサ目テングサ科の海藻。トリアシユイキリ (結切) ともいう。漸深帯 10~20mの深さの岩上に群生する。全長5~20cm,節だらけで円柱状の茎は不規則に分岐し,紐状の仮根で着生する。この茎には円盤状の葉が密生し,しかもその上に,ある種のカイメン類が着生したりするので,外見がニワトリの脚によく似ており,この和名がつけられた。良質ではないが寒天の原藻に用いられる。宮崎県より千葉県にいたる太平洋岸に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のトリノアシの言及

【ユイキリ】より

…体は円柱状で互生または叉(さ)状に分枝して高さ10~20cmになる紅藻(イラスト)。体の表面に海綿動物が共生し,その様子が鳥の足の皮膚を思わせるのでトリアシまたはトリノアシの別名がある。関東地方以西の太平洋沿岸,九州北岸,朝鮮半島沿岸等に分布する深所産の海藻で,寒天やところてんの原料にする。…

※「トリノアシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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