改訂新版 世界大百科事典 「トンボエダシャク」の意味・わかりやすい解説
トンボエダシャク (蜻蛉枝尺)
Cystidia stratonice
鱗翅目シャクガ科の昆虫。翅の開張5~6cm。体,翅とも細長く,トンボを連想させる姿をしている。体は橙色で,腹部に黒紋を連ね,翅も薄黒く,大きな白紋と白帯がある。触角は棍棒状に近い。北海道から屋久島までと,朝鮮半島,シベリア南東部,中国,インドに分布する。成虫は昼飛性で,6月ころ,幼虫の食樹であるツルウメモドキやハコネウツギなどの付近を飛び回る。幼虫は体長4cmくらいのシャクトリムシで,淡黄色の地に鮮明な黒紋を各環節に連ねる。6~7月に卵からかえった幼虫は,成長の途中で越冬し,春に再び葉を食べて,5月下旬に老熟し,葉の間に糸を吐いて蛹化(ようか)する。近縁のヒロオビトンボエダシャクC.truncangulataは,生態もよく似ており,しかも同一地域で同時に発生することが多いが成虫腹部と幼虫体の黒紋が小さく,形が不規則で,翅の幅がやや広いことで本種と異なる。国内分布もほぼ同じである。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報