ドクウツギ(読み)どくうつぎ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドクウツギ」の意味・わかりやすい解説

ドクウツギ
どくうつぎ / 毒空木
[学] Coriaria japonica A.Gray

ドクウツギ科(APG分類:ドクウツギ科)の落葉低木。幹の基部から多く分枝して茂り、高さ約1.5メートル。葉は四角形の枝に左右2列に対生し、外見上は羽状複葉にみえる。葉身は卵状長楕円(ちょうだえん)形または長楕円状披針(ひしん)形で長さ5~8センチメートル、全縁で先はとがり、基部は丸い。単性花で雌雄同株。春、枝の節に総状花序を束生する。雄花序は短く、雌花序はやや長く、並んで出る。雄花、雌花ともに萼片(がくへん)5枚、花弁5枚。雄花には5本の雄しべがあり、葯(やく)は黄色。雌花には退化した5本の雄しべと、花柱が赤色の子房が5個ある。果実は5個の痩果(そうか)からなり、多肉質となった宿存花弁に包まれる。汁は甘味があるが、コリアミルチン、ツチンなどの猛毒を含み、誤って食べると死ぬこともあるのでドクウツギの名があり、別名イチロベゴロシ(市郎兵衛殺)ともいう。山野の河原などの礫地(れきち)に生え、近畿地方以北の本州、北海道に分布する。

 ドクウツギ科Coriariaceaeは双子葉植物、離弁花類。低木。葉は対生で単葉。花は5数性で放射相称。果実は5または10個の痩果からなる。南北両半球にとびとびに分布し1属15種が知られる。

[古澤潔夫 2020年2月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドクウツギ」の意味・わかりやすい解説

ドクウツギ(毒空木)
ドクウツギ
Coriaria japonica

ドクウツギ科の落葉小低木で,イチロベゴロシともいう。近畿地方以東の本州および北海道に分布し,河岸や林縁など日当りのよい荒れた場所によく生える。高さ 2mほどで全体に毛はなく,枝はやや太めで稜があり,断面は四角形をなす。柄のない葉が2列に対生するため,一見羽状複葉に見える。葉は先のとがった狭卵形で,長さ6~8cmあり,3本の葉脈が目立つ。春に,葉の出る前に総状花序をなして黄緑色の小花を多数つける。雌雄異花で,雌花序と雄花序とが同じところから出る。雌花の花弁は紅色で5枚あり,花時には小型であるが,のちに著しく大きさを増して多肉質となり果実を包む。果実は球形で熟すると紫黒色になる。果汁は甘いが猛毒成分があるため,あやまって食べると死ぬ。茎や葉も有毒。1属1科の植物であるが,同属の種類は南アメリカやニュージーランドなどに数種あり,やはり有毒なものが多い。

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