眼の結膜,角膜の病気の治療や消毒の目的で,流水により洗い流す操作をいう。抗生物質発見以前には,治療のための有効な薬が少なく,結膜および角膜の表面についた細菌類を物理的に洗い落とす目的で頻用され,洗眼は眼科医の基本手技の一つであった。水にはホウ酸等を溶かして滅菌効果を高めた。しかし抗生物質の発見・発達後には,結膜,角膜の細菌性疾患には,点眼を主とする抗生物質が用いられるようになり,これが有効に作用することがわかってきた。また一方,洗眼することが,ある場合には感染を媒介することがあり,感染症の治療として洗眼が用いられることはきわめて少なくなった。現在,洗眼が多用されるのは,眼科手術の前に,手術をするところを消毒する場合である。グルコン酸クロルヘキシジン(商品名ヒビテン・グルコネート液)を0.02%くらいに薄めた液を流すとともに,手指,綿等でこすりつつ洗浄する。
洗眼が最も効果を発揮するのは,眼に酸・アルカリの薬品が入った眼薬傷の時である。この場合,理論的には,酸が入れば弱アルカリの炭酸水素ナトリウム液,アルカリに対してはホウ酸の水溶液で洗うのがよい。しかし,そうした用意がなされていることはまれであり,多くの場合は水道水を使うことになる。水道にホースをつけ,分秒を争って,大量の水で勢いよく洗い流すことがたいせつである。これにより,酸・アルカリの組織内への侵入が最小限におさえられる。これは,その後の予後をよくするためにぜひとも必要なことである。
執筆者:佐藤 孜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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