ドグラマグラ

デジタル大辞泉 「ドグラマグラ」の意味・読み・例文・類語

どぐらまぐら【ドグラ・マグラ】

夢野久作による長編の幻想小説。昭和10年(1935)刊行記憶を失い精神病棟で目覚めた主人公による独白形式で描かれる、実験的な不条理小説。

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改訂新版 世界大百科事典 「ドグラマグラ」の意味・わかりやすい解説

ドグラ・マグラ

夢野久作長編小説。1935年(昭和10)書下ろし刊行。26年から《狂人の解放治療》と題して着手,何度も書き直し,〈これを書くために生きてきた〉というほど畢生(ひつせい)の大作で1200枚に及んでいる。九州帝国大学の精神科病棟で目を覚ました主人公は,自分の過去ばかりか名前も思い出せない。そこへ法医学の若林教授が来て,主人公が精神病科の正木教授の新学説にもとづいた画時代的な治療の実験材料だと説明してくれた。この2人の痛快深刻をきわめた学術論争に巻きこまれた主人公の苦悩表面に,科学的原理を軸にした輪廻転生の思想小説ともいうべく,類を絶する超小説といえよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドグラマグラ」の意味・わかりやすい解説

ドグラ・マグラ
どぐらまぐら

夢野久作の、狂気殺人主題にした長編幻想小説。1935年(昭和10)春秋社刊。狂人の独白を多用したプロット錯綜(さくそう)してやや難解のきらいがあるが、主人公は記憶喪失者であり、精神病棟のなかで自分が何者であるかを必死になって模索する。やがて『ドグラ・マグラ』という標題原稿をみつけてそれを読み進むうちに、自分が母親や許婚者を殺した狂人であり、しかも自分を殺人狂にしたのは精神病理学の正木教授の非人道的実験材料にされた結果であることを知る。しかし狂人が真犯人を発見しても、現実と幻想の境目がないので真相は永遠に謎(なぞ)に包まれたままである。不条理の世界をグロテスクに描いて、戦前の日本では実にユニークなファンタジーである。

厚木 淳]

『『ドグラ・マグラ』全二冊(角川文庫)』

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