ドッソ・ドッシ(読み)どっそどっし(その他表記)Dosso Dossi

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドッソ・ドッシ」の意味・わかりやすい解説

ドッソ・ドッシ
どっそどっし
Dosso Dossi
(1479ころ―1542)

イタリアの画家生年については1490年ころとする異説もあり、マントバの近くで生まれ、フェッラーラで没したと考えられる。本名をジョバンニ・ルテーリGiovanni Luteriというが、一家が領地を所有していたマントバ近郊の地名に由来するドッソという通称で知られる。1514年ころフェッラーラのエステ家に仕えるようになり、以来、フェッラーラを中心に活動する。しかし、その様式にはジョルジョーネ筆頭とするベネチア派の影響が顕著である。代表作『キルケ』(1522ころ・ローマ、ボルゲーゼ美術館)には、ベネチア的な叙情性と風景描写に加えて、当時のローマ絵画から学んだと思われる堂々とした形態表現もみられる。彼の弟バッティスタBattista(?―1548)も画家であったが、2人は共同してタペストリー下絵陶器デッサン、祝祭時の装飾などを手がけている。

[石鍋真澄]

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改訂新版 世界大百科事典 「ドッソ・ドッシ」の意味・わかりやすい解説

ドッソ・ドッシ
Dosso Dossi
生没年:1490ころ-1542

イタリアの画家。本名ルテーリGiovanni Luteri。コレッジョロットのごとく,ルネサンスの伝統を破る革新性を示したが,継承者なく地方的芸術にとどまった。マントバのエステ家の差配の子として生まれ,エステ家と縁続きフェラーラ宮廷に仕えて,1514年以降同地に定住した。ジョルジョーネの牧歌画の様式に感化され,15世紀フェラーラ派の博学な伝統を継承した。その画風は鮮明な色彩,詩的情緒にみちた自然,多くの寓意を含む謎めいた夢幻的な主題を特色とする。20年にローマに旅行,これ以後はローマ派古典主義の影響を受けて大様式にもとづく宗教画を数多く制作したが,初期の独自性を失った。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドッソ・ドッシ」の意味・わかりやすい解説

ドッソ・ドッシ
Dosso Dossi

[生]1479以後.マントバ?
[没]1542. フェララ
イタリアの画家。 1490年以前に生れた。フェララのエステ家宮廷を中心に活躍。本名 Giovanni di Luteri。ジョルジョーネやティツィアーノのベネチア派,さらにラファエロの影響を受け,フェララ絵画からは伝来の幻想性を受継いで,有名な『魔法使いのキルケー』 (1530頃,ローマ,ボルゲーゼ美術館) のような神話を主題とした作品や多くの宗教画を残した。

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