日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドリュオン」の意味・わかりやすい解説
ドリュオン
どりゅおん
Maurice Druon
(1918―2009)
フランスの小説家。パリの生まれ。小説家ジョゼフ・ケッセルの甥(おい)にあたる。第二次世界大戦中、自由フランス軍側で報道にあたり、戦後、文学の道に入る。戦前フランス社会と個人の運命を重ね合わせたパノラマ的小説『人間の終末』La fin des hommes三部作の第一作『大家族』Les grandes familles(1948)でゴンクール賞を受賞、第二作『閥族の崩壊』La chute des corps(1950)、第三作『地獄での邂逅(かいこう)』Rendez-vous aux enfers(1951)で文名を確立。ほかに歴史大河小説『呪(のろ)われた王たち』Les Rois maudits(1955~1977)、環境文学として受け止められてもいる童話『チスト――みどりのおやゆび』Tistou les pouces verts(1957)などがある。やや通俗的なレアリスムで、環境に支配されながらも雄々しく生きようとする人間を描く。保守派政治家でもあり、1973年から1年間文化大臣を務めた。1980年代に入ってからは、小説の発表はなく、文化政策などにかかわる論著が目だつ。1966年アカデミー会員となり、1985年には終身幹事長となるが、健康を理由に1999年その地位を退いている。
[小林 茂]
『小沢優子訳『チスト――みどりのおやゆび』(1991・兼六館出版)』▽『市原豊太・梅原成四訳『人間の終末 第1部――大家族』上下(新潮文庫)』