( 1 )「なされます」→「なさいます」→「なはいます」→「なはあます」→「なはます」→「なあます」→「なます」といった音韻変化により成立したと考えられる。宝暦(一七五一‐六四)頃から京島原・大坂新町で遊女や遊里の女性が客に対して用いた語。「…んす」系の「んす」「さんす」「ござんす」「くだんす」に代わり、京・大坂では明和(一七六四‐七二)頃に最も特徴ある遊里語の一つとなり、明治初年まで使われた。
( 2 )江戸吉原では「なされます」から変化した「なんす」を使っていたが、天保(一八三〇‐四四)頃から「なます」を使うようになる。これは「ます」の盛行によるもので、「ざんす」も「ざます」となった。
魚貝や獣などの生(なま)肉を細かく切ったもの、またそれらを酢などで調味したもの。なますは最古の歴史をもつ調理法の一つである。膾は獣肉を含み、鱠の文字は魚貝類に限って用いたこともあったが、いまは生酢と書くほうが多い。割鮮は中国渡来のことばで、『日本書紀』(720)では「ナマスツクル」と読み、なますの意であるが、『文選(もんぜん)』(6世紀前半)では「アザラケキヲサク」と読ませ、火熱を用いない料理の意に用いている。また『和名抄(わみょうしょう)』(931~938ころ)では、鱠を「奈万須(なます)」と読み、「細切完(肉)也(なり)」と解説している。生切(なますき)の略、生肉(なましし)の転じたものとみられているが、後世ではなまの材料に酢を加えた意味と考えている。古代の鱠は魚肉などを細かく切って盛るといわれ、現代の刺身との区別はつけにくい。『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』(1697)には、切り裂いたものを鱠、糸のように細く切ったものを刺身といい、鱠は醋(す)に和し、刺身は熬酒(いりさけ)(古酒にかつお節、梅干し、白塩などを加えて煮つめた調味料)に和すという。また、鱠と刺身の区別はその割切(きりさき)の違いによるとしているが、その差はかならずしも明らかでない。おそらく、室町期ごろに、なますに酢を用いるようになり、一方の刺身に熬酒(煎酒)あるいはしょうゆを用いるようになって、両者の区別が明らかになったのではあるまいか。「なますのごとくに切り刻む」「なますに叩(たた)く」などという言い方がよく使われるが、これはなます本来の姿から出た形容語である。
[多田鉄之助]
なますには調味酢を用いるが、二杯酢、三杯酢、たで酢、みそ酢などがある。淡水魚にはみそ酢がよく調和する。がんぞうなます(含雑膾)は夏の料理である。これは「くゎぞう」(和雑)が「かんぞう」となまったものといわれ、キス、サヨリ、カレイなどを細く刻み、酢と塩を適宜加えてつくる。牡蠣(かき)でつくるなますは、一般に牡蠣酢といっている。皮なますは、ハモの皮をさっと洗い、水けをきって、両面から焦げないように焼いて、細かく切り、キュウリもみと和(あ)える。刻んだウド、ダイコンを加えることもある。沖なますは、海水程度の塩水に魚を浸(つ)けてから取り出し、細切りにする。船中でとりたての魚を用いる沖なますは、各地各様の作り方があり、たたきなますの名もある。揚げなますは、油揚げを焼いて細切りにし、大根おろしと三杯酢を加える。いもなますは、ヤマノイモを材料にしたもの。柿(かき)なますは生(なま)柿を材料にするが、正月料理には干し柿を用いてつくる。大根なますは、ダイコン、ニンジンを細く刻んでつくる。
[多田鉄之助]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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