音韻変化(読み)オンインヘンカ

デジタル大辞泉 「音韻変化」の意味・読み・例文・類語

おんいん‐へんか〔オンヰンヘンクワ〕【音韻変化】

ある言語のある音が、歴史上一時期に他の音へ変化すること。例えば、日本語のハ行の頭子音が[Φ]から[h]になった類。

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精選版 日本国語大辞典 「音韻変化」の意味・読み・例文・類語

おんいん‐へんか オンヰンヘンクヮ【音韻変化】

〘名〙 ある言語のある音の発音時代とともに一斉に変化すること。普遍的変化と個別的変化とに大別される。日本語において、前者の例として、ハ行子音がfからhに変化したとか、語中語尾のハ行子音がfからwに変化したなどの類、後者の例として、「そそく」が「そそぐ」に変化したなどの類がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「音韻変化」の意味・わかりやすい解説

音韻変化
おんいんへんか

言語音声における変化。言語音声は一部ずつ絶えず変化している。そのため、小規模でわずかな音声の変化も、長い期間を経れば、音韻体系までも大きく変貌(へんぼう)させてしまう。音韻変化には、〔1〕個々の音が内的原因から個別的に変化する場合と、〔2〕隣接する音の影響により条件的に変化する場合とに分けられる。

〔1〕個別的変化は、古い世代と若い世代との間にみられる発音方法の相違に基づくとする説と、調音運動における労力をできる限り節減しようとする経済的傾向に帰因するという説がある。

〔2〕条件的変化については、ある音が隣接する音から調音の面で影響を受ける同化作用が問題となる。(a)前の音が後の音を同化する順行同化は、英語の複数形cats[kæts]「ネコ」とdogs[dɔgz]「イヌ」の複数語尾-sにおける発音の仕方にみられる。(b)後の音が前の音を同化する逆行同化は、five pence[faifpens]「5ペンス」とfive[faiv]を比較すればわかる。

 また、日本語のkutiwa→kutuwa「くつわ」では、母音uが子音tを飛び越えて次の母音iに遠隔の同化を行っている。変化においてある音声が変わると、それにつれて他の音も変わることがある。中世英語meet[me:t]が[mi:t]「会う」と母音が変化すると、mite[mi:t]のほうも[mait]「ダニ」に変わった。このように、音韻体系のなかで音韻変化は連鎖反応をおこす、という見解もある。

[小泉 保]

『池上二良編『言語の変化』(『講座言語 第2巻』1980・大修館書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「音韻変化」の意味・わかりやすい解説

音韻変化
おんいんへんか
sound(phonetic, phonological) change

ある言語のある時期の音韻が,意味とは無関係に歴史的に変化すること。 19世紀後半の比較言語学の発達とともに,同じ音韻的環境にある音韻は,変化する場合には,すべての語において規則的に同じ音韻に変化し,決して2つに分化しないことが経験的に明らかにされた。音韻変化は,調音そのものの変化をさし,調音的に,また音響的・聴覚的に近い音韻に変るものである。この点,類推,省略,通俗語源 (→通俗語源説 ) などによる語形の変化は,意味や意識などの心理的要素が入る異質なもので,借用とともに音韻法則上の「例外」をなす要因となる。音韻変化は,1対1の変化,2対1の変化 (統合または合流) ,1対2の変化 (分化) に分けることができる。1つの音韻は,異なる音韻的環境にあるときにのみ,2つ (以上) に分化しうる。変化は世代差という形をとって進行するのが普通である。なお「音韻」変化は,これを音韻体系に変化をもたらすものに限定し,そうでないものは「音声」変化としたり,また必ずしも現代的な意味での「音韻」とは関係なしに,一般的に音の変化をさすこともある。この場合は「音」変化と呼ぶことも多い。

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