ナンジャモンジャゴケ(その他表記)Takakia lepidozioides Hatt.et Inoue

改訂新版 世界大百科事典 「ナンジャモンジャゴケ」の意味・わかりやすい解説

ナンジャモンジャゴケ
Takakia lepidozioides Hatt.et Inoue

日本の北アルプスで最初に発見され,1958年に命名・発表されたナンジャモンジャゴケ科の原始的な苔類。その後,大雪山,飯豊山,志賀高原や北アメリカの北太平洋岸地域,ヒマラヤおよびボルネオキナバル山)で発見されて,スケールの大きい隔離分布をしていることが明らかになった。高山の岩隙(がんげき)などに群生し,植物体は高さ約1cm,仮根を欠く。葉は基部まで2~3裂し,各裂片は棒状造卵器は茎の表面に裸出,単生する。造精器と胞子体は未知である。染色体数はn=4で,コケ植物の中で最小である。本種は形態的に他のコケとひじょうに異なっており,発見された当初,はたしてコケ植物か否かさえ不確かであったため,ナンジャモンジャゴケの名がついた。属名のTakakiaは発見者の高木典雄にちなんだもの。

 ナンジャモンジャゴケ科は1属2種を含み,他の1種T.ceratophylla (Mitt.) Gro.はヒマラヤとアレウト列島に分布する。染色体数はn=5である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナンジャモンジャゴケ」の意味・わかりやすい解説

ナンジャモンジャゴケ
なんじゃもんじゃごけ
[学] Takakia lepidozioides Hatt. et Inoue

コケ植物ナンジャモンジャゴケ科の代表的な種。1956年(昭和31)、日本の白馬岳(しろうまだけ)で初めて発見された。当初は、コケ植物かシダ植物の特殊なものか、あるいは緑藻類なのかがはっきりしなく、えたいのわからない植物という意味でこの名がつけられた。その後、北海道大雪(たいせつ)山、山形県飯豊(いいで)山などからの報告に加えて、ヒマラヤ、ボルネオ島、中国、アリューシャン列島、カナダ西海岸(クイーン・シャーロット諸島)などからも発見された。やがてコケ植物特有の造卵器もみつかり、現在ではコケ植物の特殊なものと考えられている。染色体数はn=4で、陸上植物のなかでは最少である。植物体は高さ2~3センチメートル、枝分れは少なく、円柱状の茎をもつ。葉は茎と同じく棒状で、2~3裂し、螺旋(らせん)状に茎に配列する。仮根はない。造卵器のみは知られているが、造精器、胞子体はまだ知られていない。

 ナンジャモンジャゴケによく似た種類に、ヒマラヤとアリューシャン列島からみつかっているヒマラヤナンジャモンジャゴケT. ceratophyllaがある。これは、葉の組織がナンジャモンジャゴケよりもすこし厚く、染色体数はn=5である。現在までのところ、ナンジャモンジャゴケ科には、前述の種とこの種だけが知られているにすぎない。なお、ナンジャモンジャゴケ科とコマチゴケ科とは近縁関係にあるとする学者もいる。

[井上 浩]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナンジャモンジャゴケ」の意味・わかりやすい解説

ナンジャモンジャゴケ
Takakia lepidozioides

タイ類ナンジャモンジャゴケ科の1種。高山帯の岩隙に生え,植物体は1~5cmの長さで立上がって群生する。茎の下部より鞭枝を出し仮根はない。葉は棒状,基部まで2~3裂し,各裂片におのおのが独立したようにみえる。造卵器は形が葉に似ているが,ずっと小型で足が厚くて長い。茎の上部の葉の間に散生する。造精器や胞子体は見つかっていない。染色体数n=4で,センタイ類中最少の数である。日本の北海道,本州,北アメリカ西北部,ボルネオに分布する。

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