大雪山(読み)たいせつざん

精選版 日本国語大辞典 「大雪山」の意味・読み・例文・類語

たいせつ‐ざん【大雪山】

(「だいせつざん」とも)
[一] 北海道中央部、上川支庁にある火山群。中央部のカルデラ御鉢平(おはちだいら)を中心に、北海道最高峰の旭岳(二二九〇メートル)、北鎮(ほくちん)岳(二二四四メートル)、白雲岳(二二三〇メートル)などからなる。ふもとに層雲峡や愛山渓温泉などの登山基地がある。大雪山国立公園の中心。
[二] 中国四川省の西部を南北に走る山脈。最高峰はミニヤ‐コンカ(貢嘎)山(七五五六メートル)。大雪山脈
[三] 台湾北部、台湾山脈の山。標高三五二九メートル。

だい‐せっせん【大雪山】

ヒマラヤ山脈の異称。
※今昔(1120頃か)三「今昔、天竺の大雪山の頂に一の池有り」

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デジタル大辞泉 「大雪山」の意味・読み・例文・類語

たいせつ‐ざん【大雪山】

《「だいせつざん」とも》北海道中央部の火山群。主峰の旭岳は北海道の最高峰で標高2291メートル。
中国、四川省西部にある山脈。最高峰はミニヤコンカ貢嘎こんか山)の標高7556メートル。
台湾北部、雪山の南にある山。標高3529メートル。

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日本歴史地名大系 「大雪山」の解説

大雪山
たいせつざん

石狩山地の北西部に位置。北海道最高峰のあさひ(二二九〇・三メートル)を主峰に、二〇余の火山が密集する複合火山の総称。「だいせつざん」ともよぶ。上川郡上川町・東川ひがしかわ町・美瑛びえい町にまたがり、北海道の屋根といわれる。広義では旧石狩・北見・十勝三国の境界をなす北部の表大雪おもてたいせつと、南東方の然別しかりべつ火山群を中心とする十勝地方の東大雪ひがしたいせつ(裏大雪)を含む。昭和九年(一九三四)大雪山国立公園に指定された。

〔名称・歴史〕

明治期まで石狩岳・石狩山などと称され、主峰の旭岳はアイヌ語で「ヌタ(ク)カウシユペ」とよばれてきたという(河野常吉「大雪山及石狩川上流探検開発史」)。「戊午日誌」(登加智留宇知之誌)の挿画に「チユクペツノポリ」と「アイペツノポリ」の間に大きな山塊が描かれ、「石狩 ノタツカウシノポリ」と記されており、当山に相当するとみられる。一八五七年(安政四年)イシカリ役所(現石狩市)在勤の松田市太郎が石狩川の水源を探検、忠別ちゆうべつ川に沿って当山域に入っており、イシカリ川水源見分書(道立図書館蔵)にみえる石狩山は大雪山(旭岳)とみられる。同年松浦武四郎も忠別川を遡上し石狩川源流近くまで達した(「丁巳日誌」再石狩日誌)。山川地理取調図に記載された石狩岳は大雪山をさすと考えられる。明治七年(一八七四)石狩川源流域まで探査した開拓使の米人技師ライマンは「石狩、十勝ノ両岳ハ、真ニ旧火山ノ形容ヲ具セリ」と記している(「ケプロン報文」来曼北海道記事)。同九年松本十郎は石狩川の源流に到達し、「石狩岳、十勝岳、天塩岳、信ノ満岳、大抵山脈接続ス。只一筋ノ川脈貫通スルノミ。此ノ三岳ハ北海道ノ高岳ナリ」と記す(石狩十勝両河紀行)。同一五年札幌県の役人福士成豊が当地方の測量を行い、当山を「東オプタテシケ」とし、石狩川の源流である現石狩岳を石狩岳としたというが(前掲開発史)、明治二〇年代の輯製二十万分一図には現在の白雲はくうん岳付近に「東ヲプタテシケ山」と記載されており、西方の旭岳付近に山名の記載はない。明治一八年ナウマンは三つの高い峰として十勝岳・夕張岳とともに石狩岳をあげている(日本列島の構造と生成)。同三二年刊の「日本名勝地誌」に「山岳中其高峻なるものを挙ぐれば大雪山たいせつざん(元名ヌタカウシユベ)なり」とあるのが大雪山名のはじめとされる。

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改訂新版 世界大百科事典 「大雪山」の意味・わかりやすい解説

大雪山 (たいせつざん)

〈だいせつざん〉ともいう。北海道中央部,石狩山地北西部に位置する火山群。北海道の最高峰旭岳(2291m)をはじめ,標高2000m前後の山が十数座あり,〈北海道の屋根〉と称される。北と東を石狩川,南をその支流のヤンベタップ川と忠別川に限られ,西へすそ野を引いている。洪積世後期に高根ヶ原,忠別岳(1963m),化雲(かうん)岳(1954m),黄金ヶ原,沼の原などの溶結凝灰岩や溶岩からなる台地が形成され,続いて安山岩質溶岩の噴出により,愛別岳(2113m),比布(ぴつぷ)岳(2197m),黒岳(1984m),烏帽子岳(2072m),赤岳(2079m),やや遅れて凌雲岳(2125m),北鎮(ほくちん)岳(2244m),白雲岳(2230m)などが形成された。これらの火山群は古大雪火山と呼ばれており,南西に大きく開いて,馬蹄形に配置していることから,台地形成後に生じた大きな陥没カルデラの外壁に沿って噴出したものと考えられている。洪積世末に直径2kmの御鉢平(おはちだいら)の陥没カルデラが生じ,沖積世に入り旭岳が形成された。旭岳は安山岩質溶岩と火山砕屑物からなる成層火山で,山頂の西斜面に馬蹄形の爆裂火口をもち,現在も硫気孔の活動がみられる。

 大雪山の山頂部には,火山の溶岩流や雪食作用によって形成された池沼や高原性の湿地が多く,構造土などの周氷河地形や,カールやモレーンなどの氷河地形もみられる。植生の垂直分布はおよそ標高700~800mまでが針葉樹と広葉樹の混交林帯で,それより上の1300~1500mまでの間に亜寒帯性の針葉樹林帯があり,徐々にダケカンバ帯からハイマツ帯に移行している。約1600m以上の各所にはみごとな高山植物群落が展開し,エゾシマリスナキウサギなどの小動物やウスバキチョウ(天)をはじめとする各種の高山チョウがみられる。これらの生物群は北アメリカ・アリューシャン系,大陸系,本州系の3系統が入り混じっている学術的にも貴重なもので,裏大雪と呼ばれる十勝川源流域を含む一帯が天然保護区域(特天)となっている。

 大雪山国立公園の中心をなし,北麓には層雲峡温泉があり,1967年の黒岳中腹と結ぶロープウェー開通後は観光客が激増した。また,旭岳の西側斜面の標高1050m地点には勇駒別(ゆこまんべつ)温泉があり,旭岳の爆裂火口の西の姿見の池付近までロープウェー(1968完成)が通じている。ハイマツや高山植物が群生する池の周辺は冬季には絶好のスキー場となり,多くのスキーヤーでにぎわう。勇駒別の南に天人峡温泉がある。72年には国道273号線が開通し,上川支庁管内の表大雪と十勝支庁管内の裏大雪の両地域を結ぶ広域観光ルートが完成したが,自然破壊の進行も問題となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大雪山」の意味・わかりやすい解説

大雪山
だいせつざん

北海道中央部,石狩山地の北西部にある火山群。活火山で,常時観測火山。東西 15km,南北 10km,最高峰は旭岳(2291m)で,北海道の最高点でもある。2000mをこす安山岩質の火山が十余もあり,北海道の屋根をなす。中央火口の御鉢平(おはちだいら)には直径 2kmのカルデラがあり,その周囲に北鎮岳(2244m),凌雲岳(2125m),黒岳(1984m),赤岳(2078m),白雲岳(2230m),旭岳などの成層火山がある。大雪山国立公園に属する。ホソバウルップソウ,エゾハハコヨモギ,エゾノハクサンイチゲ,トウヤクリンドウなど珍しい高山植物の宝庫として知られ,1700m以上には,7月中旬より 8月中旬まで,エゾコザクラ,ミヤマキンバイミヤマリンドウコマクサなどの花畑が見られる。ナキウサギシマリス,エゾシカ,ダイセツタカネヒカゲ,アサヒヒョウモンウスバキチョウダイセツヒトリなどの珍しい動物や昆虫類も生息し,1977年全山が国の特別天然記念物(→天然記念物)に指定された。

大雪山
たいせつざん

大雪山」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「大雪山」の意味・わかりやすい解説

大雪山【だいせつざん】

北海道中央部にある活火山群。カルデラの御鉢平を囲み,最高峰の旭岳,北鎮岳(2244m),白雲岳(2230m)などがある。地質は古生層,花コウ岩,第三紀火山噴出物を基盤とする安山岩。1700m以上はハイマツ帯で夏も雪渓が残り,裾野(すその)は広大な原始林。大雪山国立公園に属し,日本百名山に選ばれている。
→関連項目アサヒヒョウモン石狩山地ウルップソウ上川[町]日本百名山

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事典 日本の地域遺産 「大雪山」の解説

大雪山

(北海道)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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事典・日本の観光資源 「大雪山」の解説

大雪山

(北海道)
日本百名山」指定の観光名所。

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