石狩山地の北西部に位置。北海道最高峰の
明治期まで石狩岳・石狩山などと称され、主峰の旭岳はアイヌ語で「ヌタ
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
〈だいせつざん〉ともいう。北海道中央部,石狩山地北西部に位置する火山群。北海道の最高峰旭岳(2291m)をはじめ,標高2000m前後の山が十数座あり,〈北海道の屋根〉と称される。北と東を石狩川,南をその支流のヤンベタップ川と忠別川に限られ,西へすそ野を引いている。洪積世後期に高根ヶ原,忠別岳(1963m),化雲(かうん)岳(1954m),黄金ヶ原,沼の原などの溶結凝灰岩や溶岩からなる台地が形成され,続いて安山岩質溶岩の噴出により,愛別岳(2113m),比布(ぴつぷ)岳(2197m),黒岳(1984m),烏帽子岳(2072m),赤岳(2079m),やや遅れて凌雲岳(2125m),北鎮(ほくちん)岳(2244m),白雲岳(2230m)などが形成された。これらの火山群は古大雪火山と呼ばれており,南西に大きく開いて,馬蹄形に配置していることから,台地形成後に生じた大きな陥没カルデラの外壁に沿って噴出したものと考えられている。洪積世末に直径2kmの御鉢平(おはちだいら)の陥没カルデラが生じ,沖積世に入り旭岳が形成された。旭岳は安山岩質溶岩と火山砕屑物からなる成層火山で,山頂の西斜面に馬蹄形の爆裂火口をもち,現在も硫気孔の活動がみられる。
大雪山の山頂部には,火山の溶岩流や雪食作用によって形成された池沼や高原性の湿地が多く,構造土などの周氷河地形や,カールやモレーンなどの氷河地形もみられる。植生の垂直分布はおよそ標高700~800mまでが針葉樹と広葉樹の混交林帯で,それより上の1300~1500mまでの間に亜寒帯性の針葉樹林帯があり,徐々にダケカンバ帯からハイマツ帯に移行している。約1600m以上の各所にはみごとな高山植物群落が展開し,エゾシマリス,ナキウサギなどの小動物やウスバキチョウ(天)をはじめとする各種の高山チョウがみられる。これらの生物群は北アメリカ・アリューシャン系,大陸系,本州系の3系統が入り混じっている学術的にも貴重なもので,裏大雪と呼ばれる十勝川源流域を含む一帯が天然保護区域(特天)となっている。
大雪山国立公園の中心をなし,北麓には層雲峡温泉があり,1967年の黒岳中腹と結ぶロープウェー開通後は観光客が激増した。また,旭岳の西側斜面の標高1050m地点には勇駒別(ゆこまんべつ)温泉があり,旭岳の爆裂火口の西の姿見の池付近までロープウェー(1968完成)が通じている。ハイマツや高山植物が群生する池の周辺は冬季には絶好のスキー場となり,多くのスキーヤーでにぎわう。勇駒別の南に天人峡温泉がある。72年には国道273号線が開通し,上川支庁管内の表大雪と十勝支庁管内の裏大雪の両地域を結ぶ広域観光ルートが完成したが,自然破壊の進行も問題となっている。
執筆者:奥平 忠志
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
北海道中央部に位置する火山群。「だいせつざん」ともいう。北海道の最高峰旭岳(あさひだけ)(2291メートル)をはじめ、2000メートル前後の峰々が連なる。古生層の基盤の上に、更新世(洪積世)後期に大量の溶結凝灰岩を噴出して広大な山体をつくり、その山頂部にカルデラが形成されたが、その後、安山岩系の永山(ながやま)岳、中央岳、小泉(こいずみ)岳などの火山が生成され、さらにカルデラ壁に沿って北鎮(ほくちん)岳、熊(くま)ヶ岳、白雲(はくうん)岳などの諸火山が噴出したため、カルデラの原形は著しく失われた。更新世末に御鉢平(おはちだいら)の爆裂火口が生じ、完新世(沖積世)に入って旭岳が形成され、この両者はいまも噴気孔が活動中。
植生の垂直分布は、標高800メートル付近までが針葉樹と広葉樹の混交林帯、その上は亜寒帯性針葉樹林帯からダケカンバ帯に移行し、1300~1600メートルを森林限界とする。それ以上の高所には高山植物群落が分布する。山腹には火山性湿原が多く、高所には構造土など寒冷期に形成された周氷河性の地形などがみられる。ナキウサギや、高山チョウのアサヒヒョウモン、ウスバキチョウなどが生息し、これらは北方大陸に近縁種があり、北海道が大陸と地続きであったことを示している。
大雪山国立公園の一中心をなし、表大雪山系などは「大雪山」として特別天然記念物に指定されている。
[岡本次郎]
北海道中央部に位置する火山群。「たいせつざん」ともいう。
[編集部]
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