ニッケル化合物(読み)ニッケルカゴウブツ

化学辞典 第2版 「ニッケル化合物」の解説

ニッケル化合物
ニッケルカゴウブツ
nickel compound

酸化数は-1~4であるが,Ni化合物がもっとも多い.酸化数2:水溶液および水和塩は [Ni(H2O)6]2+緑色を示すが,無水塩は一般に黄ないし緑色で,硫化物,ヨウ化物は黒色,チオシアン酸塩は赤褐色.ハロゲン化物,硝酸塩硫酸塩などは水に可溶,酸化物,水酸化物,硫化物,炭酸塩,塩基性塩などは不溶.酸化物は合金製造用に,硫酸塩,塩化物は電気めっき用電解質として用いられる.ニッケル(Ⅱ)イオンは d8 電子配置で半径が小さく,安定な錯化合物を容易に生成する.配位形式としては [Ni(CN)4]2- などの正方形四配位および [Ni(NH3)6]2+ などの正八面体六配位が普通であるが,正四面体四配位および三角両すい五配位もある.多くは常磁性であるが,正方形錯体は黄色,赤色なものが多く反磁性である.ジメチルグリオキシムとは赤色の難溶性キレートを生成し,これはニッケルイオンの検出に利用されている.濃緑色で常磁性のシクロペンタジエニル錯体[Ni (C5H5)2][CAS 1271-28-9]も知られている.そのほかの酸化数:ヘキサカルボニル二ニッケル(-Ⅰ)二水素H2[Ni2-Ⅰ (CO)6][CAS 12549-35-8]は非常に不安定で,-33 ℃ 以上で分解する.酸化数が0,1の化合物は強い還元剤である.テトラカルボニルニッケル(0)[Ni0 (CO)4][CAS 13463-39-3],ヘキサシアノ二ニッケル(Ⅰ)酸カリウムK4[Ni2(CN)6][CAS 40810-33-1]など.水和酸化物(例:Ni2O3・2H2O),ヘキサフルオロ錯塩(例:K3[NiF6]),酸化物(例:LiNiO2)のニッケル(Ⅲ)化合物および酸化物(例:NiO2nH2O),ヘキサフルオロ錯塩(例:K2[NiF6]),過ヨウ素酸錯塩(例:K[NiIO6])などのニッケル(Ⅳ)化合物は強酸化剤である.ニッケルカルボニルは無色の揮発性液体(沸点42.3 ℃)で,きわめて毒性が高い.もっとも急性な毒性を示すニッケル化合物で,症状は頭痛,めまい吐き気,おう吐など,肺炎に似た呼吸器症状を示す.毒物及び劇物取締法・毒物指定.その他,国際がん研究機関による評価では,硫酸ニッケルと,製錬の際の酸化ニッケル,硫化物類に,ヒトに対する十分な発がん性の証拠があるとされる.ニッケル化合物は化学物質排出把握管理促進法の第1種化学物質,労働安全衛生法名称等を通知すべき危険物及び有害物,大気汚染防止法の有害大気汚染物質/優先取組22物質の一つとなっている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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