日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニトロソ化合物」の意味・わかりやすい解説
ニトロソ化合物
にとろそかごうぶつ
nitroso compound
ニトロソ基-NOをもつ有機化合物の総称(無機化合物の場合はニトロシル化合物とよぶ)。
C-ニトロソ化合物
ニトロソ基の窒素原子が炭素原子と結合している化合物である。α(アルファ)-位に水素がある脂肪族の第一および第二ニトロソ化合物は、たとえ生成しても速やかに互変異性体のオキシムに変化するので、安定に得ることは不可能である。
ただし、カルボキシ基(カルボキシル基)やエステル基が隣接するとニトロソ化合物が安定に存在できる。2-ニトロソヘキサン酸エチルはその例である。第三ニトロソ化合物は安定で、たとえば、第三ブチルアミンをカロ酸(H2SO5)により酸化すると第三ニトロソブタン(別名2-メチル-2-ニトロソプロパン。分解点76℃の結晶)が得られる。
芳香族ニトロソ化合物は数多く知られていて、芳香族アミンをカロ酸により酸化すると得られる。芳香環を亜硝酸で直接ニトロソ化できる場合も多い( )。ニトロソベンゼンは、酸化すればニトロベンゼンに、還元すればアニリンになり、アニリンと反応させればアゾベンゼンが得られる。日常生活にニトロソ化合物が使われる例は少ないが、ファストグリーンO(染料)や農業用殺菌剤の例がある( )。
[廣田 穰 2015年3月19日]