ニルソニア(読み)にるそにあ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニルソニア」の意味・わかりやすい解説

ニルソニア
にるそにあ
[学] Nilssonia

裸子植物ソテツ類に属するとみられる植物の葉で、古生代ペルム紀(二畳紀)に出現し、中生代に栄えてその末期に絶滅した。葉は線形倒卵形、へら状など多様で、中軸にほぼ直角または広角をなす多数の裂片に分かれて羽状を示すことがある。葉身は中軸の上面につき、軸の上面を覆い隠すことがあり、葉脈は中軸からほぼ直角に出て、分岐することなく並行に葉縁に向かう。ペルム系、三畳系のものは多数の裂片に分かれているが、しだいに裂片の数が減少し、白亜系のものは単葉となる傾向が強い。

 茎や生殖器官の詳細は不明な点が多いが、ソテツ類の雌の生殖器官とされるベアニアBeania、雄の生殖器官とされるアンドロストロブスAndorostrobusがニルソニアと併産することがある。また、石川県の前期白亜系から産出するニルソニア・ニッポネンシスNilssonia nipponensisの葉は、つる状の茎に生ずる短枝上に生じたことがわかっている。日本では山口県、岡山県の三畳系、山口県、長野県、福島県のジュラ系、和歌山県、高知県、福井県、石川県、北海道などの白亜系から多産する。

[浅間一男・西田治文]

『西田誠編、進化生物学研究所・東京農業大学農業資料室共同企画『進化生研ライブラリー4 裸子植物のあゆみ――ゴンドワナの記憶をひもとく』(1999・信山社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ニルソニア」の意味・わかりやすい解説

ニルソニア
Nilssonia

ソテツ目に属する植物の1属で,中生代に限って生存した。この名はスウェーデンの博物学者ニルソンSven Nilssonにちなむ。葉は現生のソテツ目(10属100余種,研究者によっては9属)に近いか,またはバナナバショウの葉を小型化したようなもので,葉身は葉軸の上面につき,したがって上側から葉をみたとき,葉軸は葉身によっておおわれてみえない。葉の表皮細胞や雄性球果は現生のソテツの類と等しく,雌性球果の構造は,ソテツ属Cycas(日本でよく栽植されているソテツの類を含む)を除く現生のソテツの類のそれによく似ている。世界の中生代の地層から約110種が知られているが,いずれも脱落した葉の化石である。日本の手取累層群からある種のニルソニア葉に接する茎の化石が発見された。茎は細い長枝のまわりにらせん状に配列する短枝があり,短枝上に3~9枚の葉をつける。この形態は現生のソテツ類と著しく異なる。ニルソニア葉の化石は日本の中生代の地層からも数多く知られている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニルソニア」の意味・わかりやすい解説

ニルソニア
Nilssonia

裸子植物ソテツ目ニルソニア科に属する中生代の化石植物の属。葉は軸の両側に広く葉片がつき,平行脈が目立つ。日本では三畳紀から白亜紀までの地層に産する。

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世界大百科事典(旧版)内のニルソニアの言及

【函淵植物群】より

…これらのうちキカデオイデアは茎の組織がよく保存されているベネチテス目(ソテツ綱)の化石で,日本では数少ないこの種の化石のうちの一つである。 ソテツ類のニルソニアがかなり豊富であることから,函淵層群の中で,植物化石を含む地層をニルソニア層と呼ぶこともある。【木村 達明】。…

※「ニルソニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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