日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニルソン」の意味・わかりやすい解説
ニルソン(Birgit Nilsson)
にるそん
Birgit Nilsson
(1918―2005)
スウェーデンのソプラノ歌手。ウェスタ・カルプに生まれる。ストックホルム王立音楽院で学び、1946年同地の歌劇場でデビュー。54年、ミュンヘンでワーグナーの『ニーベルングの指環(ゆびわ)』のブリュンヒルデを歌ったほか、ウィーン国立歌劇場、バイロイト音楽祭に初登場した。57~70年は毎年バイロイト音楽祭で『トリスタンとイゾルデ』のイゾルデ、『ニーベルングの指環』のブリュンヒルデやジークリンデを歌い、当代最高のワーグナー歌手の一人とされた。オーケストラの響きにも劣らぬほどの豊かな声量、また、劇的で緊張感にあふれた表現により、ワーグナーばかりでなく、『エレクトラ』などR・シュトラウスのオペラでも名演を残した。67年(昭和42)大阪国際フェスティバルの『トリスタンとイゾルデ』公演で初来日。85年引退。
[美山良夫]
『ウィーン国立歌劇場友の会編、香川檀訳『ウィーン・オペラの名歌手(1)』(1988・音楽之友社)』▽『本間公著『この声が魅了する――続・思いっきりオペラ』(1994・宝島社)』▽『スカイラー・チェイピン著、ジェームズ・ダニエル・ラディチェス写真、藤井留美訳『わが友、すばらしきオペラの芸術家たち』(1998・フジテレビ出版)』
ニルソン(Lars Fredrik Nilson)
にるそん
Lars Fredrik Nilson
(1840―1899)
スウェーデンの化学者。ウプサラ大学で動物学、地質学、化学を学んだ。一時父の病気と自身の病気療養のため故郷のゴトランド島で父の農場を経営。健康回復後、1866年学位をとり、化学の研究を続け、1876年ウプサラ大学分析化学教授。1883年ストックホルムの王立農業アカデミー農芸化学教授。希土類の周期律解明のため、その物理・化学的性質の研究をペテルソンとともに始め、希土類鉱物のユークセン石から、イッテルビアを分離精製中、不溶性塩基性塩中に塩基性の弱い新希土類を発見、含まれる新元素をスカンジウムと命名した。この元素とメンデレーエフの予言元素エカホウ素とが同一であることを同じスウェーデンの化学者クレーベPer Theodor Cleve(1840―1905)が指摘し、周期律の正しさが検証された。ベリリウムの原子量と比熱の研究、トリウム酸化物の精製などの無機化学の業績のほかに農芸化学の論文も多くあり、技術や農業問題の相談役も務め、故郷の島の土地改良と島へのテンサイの導入にも功績があった。
[梶 雅範]