ゴトランド島(読み)ゴトランドトウ(その他表記)Gotland

デジタル大辞泉 「ゴトランド島」の意味・読み・例文・類語

ゴトランド‐とう〔‐タウ〕【ゴトランド島】

Gotlandスウェーデン南東部、バルト海上の島。古生代シルル紀地質からなり、大理石石灰岩を産する。中心都市のビスビューは、ハンザ同盟都市として繁栄した。ゴットランド島

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精選版 日本国語大辞典 「ゴトランド島」の意味・読み・例文・類語

ゴトランド‐とう‥タウ【ゴトランド島】

  1. ( ゴトランドはGotland ) スウェーデン南東部、バルト海にある島。ゴトランド県を構成する。県都はビスビー。氷河に浸食された古生代ゴトランド紀の地質からなる台地状の島。石器時代などの遺跡が多い。農業・牧畜・水産業を主とし、石灰石・大理石を産出する。

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改訂新版 世界大百科事典 「ゴトランド島」の意味・わかりやすい解説

ゴトランド[島]
Gotland

バルト海にあるスウェーデン最大の島。面積約3000km2,人口5万8000(1996)。高緯度に比し気候は温暖で,土地も肥え,現在は農牧業を主産業とする。非常に早くから人が住み,考古学宝庫といえる。

 バルハーガルVallhagarの定住跡(1世紀ころから6世紀にかけての連続居住)は,ゲルマン人の居住形態研究上の重要な資料となっている。島名はこの島がゴート人の移動の通過点だったことを示す。またランゴバルド人の故郷とされる。13世紀初めの成立とされる〈ゴトランド法Gutalagen〉とその付属歴史叙述によれば,初期中世において島の農民は独立の法と集会機構tingをもっていたが,バイキング時代にはスウェーデン王の宗主権下に入っていた。銀貨がきわめて多く出土し,ローマ銀貨(1~2世紀のもの)は,スウェーデン全体で約7000枚のうち5000枚が,バイキング時代の主としてアラブ銀貨と銀製腕輪からなる埋蔵宝は約1000件のうち700件が,この島に集中している。ローマ銀貨は使用の跡がなく,ゲルマン人がローマからの給与などのかたちで直接もちこんだものと推定されるが,アラブ銀貨と腕輪は磨滅し切断され,流通手段であったことを示す。

 バイキング時代からこの島は,土地の肥沃さと地理的条件のため遠隔地交易の中心であった。交易者は農民で,島産の馬と食糧が輸出された。しかしスウェーデン本土から鉄原料が輸入され,加工して鉄製品(とくに武器)を輸出したように,加工および仲介貿易に特色がある。スウェーデン本土,フィンランドロシアからえた毛皮,蠟などをヨーロッパ大陸,アラブ・イスラム世界,ビザンティン帝国にもたらし,また東方には奴隷も輸出した。ゴトランド商業は,12世紀ザクセンのハインリヒ獅子公リューベックの建設者)と結び,ノブゴロドに商館をもつことで全盛を迎える。リューベック領域の自由通過権をうることによってドイツ,北海地方,イングランドノルウェーとの交易がなされ,他方リューベックをはじめとするハンザ同盟の商人もゴトランドの都市ビスビューを訪れた。12世紀末にはドイツ教会が建設された。1210年代,ビスビュー在住ドイツ人のギルドが組織され,しだいに市政を掌握した。やがてリューベックが,バルト海の西の出口の通過をゴトランド人に禁じ,またビスビューを島の他の部分から政治的に分離(スウェーデン王の直領化。1288)し,その結果ゴトランド農民商人は西方市場から閉め出されることとなった。さらにハンザ同盟は,ノブゴロドのゴトランド商館をにぎり(1331),ハンザ都市市民以外にはこの地のハンザ特権を認めないとの規定(1366)によって,ロシアからもゴトランド農民商人を排除した。しかしこうして成立したハンザ同盟のバルト海征覇の中心としてのビスビューの繁栄も,カルマル同盟(デンマーク)とスウェーデン・リューベックの紛争によって打撃をうける。デンマーク王バルデマール4世のビスビュー占領(1361)以来,兵火に苦しみ,政治的支配者を変え,スウェーデン領としての安定が確立されたのは,ブレムセブルーの和議(1645)以後である。今日この島は遺跡に富んだ観光・保養地ともなっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴトランド島」の意味・わかりやすい解説

ゴトランド島
ごとらんどとう
Gotland

バルト海に浮かぶスウェーデン最大の島。首都ストックホルムの南南東約160キロメートルに位置する。南北約120キロメートル、最大幅約50キロメートル、面積3140平方キロメートル。最高点が83メートルの平坦(へいたん)地である。全島が古生代前期の石灰岩からなる。地質時代のゴトランド紀はこの島の名に由来する。石灰岩を石材として産出するほか、セメントの生産も多い。主たる産業は農業と牧畜業で、とくにヒツジの飼育は国内随一である。周辺の島々をあわせて一県をなし、人口5万7751(1993)。県都はビスビー。

[田口雄作]

歴史

人跡は旧石器時代からあり、新石器時代にはスウェーデン本土とバルト海沿岸との交易が盛んで、9~11世紀には東・西ヨーロッパを結ぶ重要な中継交易地となった。伝説によれば、9世紀ごろ中央スウェーデンで勢力を振るったスベア人の王の支配下となったが、自治権は有していたといわれる。13世紀には、進出してきたドイツ商人が活躍し、同島最大都市ビスビーはハンザ同盟に加盟した。1361年デンマーク王のバルデマー・アッテルダーに同市は征服され、その後デンマークとの関係を深めた。一時ドイツ騎士団に解放されたが、1408年に再度デンマークに奪回された。16世紀後半にスウェーデンは遠征を試みたが不成功に終わり、それ以降、両国間で領有権の争いが絶えなかった。1645年ブレムセブルーの講和で、正式にスウェーデン領となった。しかし、同島はバルト海上の重要な軍事的要所のため、再度デンマークに占領され、1808年にはロシアに占拠されたが、スウェーデンの領有権は不変であった。

[清原瑞彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴトランド島」の意味・わかりやすい解説

ゴトランド島
ゴトランドとう
Gotland

スウェーデン南東部,ゴトランド県の島。バルト海最大の島で,周辺の小島とともに県を形成して,その中核をなしている。中心都市ビスビュー。青銅器時代から広範囲に交易が行われ,スカンジナビアで発見されたローマ銀貨約 7000個のうち 5000個がここから出土した。オオムギ,ライムギ,テンサイの栽培,ヒツジの放牧,漁業が行われ,大理石,セメントを産する。観光地としても有名。面積 3001km2

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世界大百科事典(旧版)内のゴトランド島の言及

【バイキング美術】より

…他方,デンマーク,ユトランド半島東部のイェリングの墓地に残るルーン石には,組紐文化した怪獣のほかキリスト磔刑像が表されているが,キリストを囲む組紐文がその体をがんじがらめに縛っている印象を与える。また,スウェーデンのゴトランド島にはきわめて特色のある一連の石碑が見られる。それらは二つの群に分かれる。…

※「ゴトランド島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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