ヌマビル(その他表記)Helobdella stagnalis

改訂新版 世界大百科事典 「ヌマビル」の意味・わかりやすい解説

ヌマビル (沼蛭)
Helobdella stagnalis

ヒル綱グロシフォニ科の環形動物。世界中に広く分布し,日本でも各地に見られる。池,沼,湖などに生息するが,とくに食物が豊富な硬水(炭酸カルシウムCaCO3含量60mg/l以上)の場所を好む。体は,やや細長い卵形で体長6~12mm,体幅約4mm,灰白色半透明で,斑紋や乳頭などはないが,前方の背面中央に1個の黄褐色キチン質小板をもっている。前吸盤は小さく,その底に口がある。後吸盤は大きい。雌雄同体で雄生殖口と雌生殖口はともに第12体節に開くが,雄生殖口がやや前方に位置する。体内には6対の側盲囊があって,貝類や小昆虫類などの体液を吸って,一時ここに蓄えるが,形は単純で発達の程度は低い。腎管は16対あり,体腔の腹洞に開いている。皮下洞が表皮細胞の間に侵入しているので体液は外界に接近して循環している。産卵のときは体を斜めに腹側に折り曲げ,6~12個の卵囊を規則正しく体の腹面に付着させ,幼個体が孵化(ふか)するまで保護する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌマビル」の意味・わかりやすい解説

ヌマビル
ぬまびる / 沼蛭
[学] Helobdella stagnalis

環形動物門ヒル綱グロシフォニ科に属する水生動物。日本各地の池、沼、湖などにすみ、スイスでは2400メートルの高山にみられる。世界共通種。体は細長い卵形で、長さ6~12ミリ、幅約4ミリの灰白色半透明。第八体節の背面中央に黄褐色のキチン質小板がある。前吸盤は後吸盤より小さい。目は第四体節上に一対ある。雌雄両生殖口は第12体節に開くが、雄生殖口が多少前方に位置する。胃の両側には六対の単純な形の側盲嚢(そくもうのう)がある。夏は水中のショウブの葉の上で生活しており、秋になって葉が枯れると根の間に集まってすむ。4~9月にかけて数回産卵するが、産み出した卵嚢を規則正しく体の腹面に付着させて保護する。卵の発生が進んで胚(はい)になると、卵嚢が破れて親の腹面に一層に並んで付着する。その後、孵化(ふか)した幼虫はしばらく後吸盤で付着したあと、親から離れて独立する。4、5月に生まれた個体は7、8月に成熟・産卵してその後死ぬが、7、8月に生まれた個体は越冬して翌春に産卵する。食物の豊富な硬水の場所をもっとも好み、昆虫のユスリカの幼虫の血を吸う。

[今島 実]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌマビル」の意味・わかりやすい解説

ヌマビル
Helobdella stagnalis

環形動物門ヒル綱グロシフォニ科。体長6~12mm。体は灰白色半透明のやや細長い卵形で,体前方の背面中央に黄褐色のキチン質の小板を1個そなえている。雌雄同体。池,沼,湖など淡水域に生息し,貝類,小昆虫類などの体液を吸う。世界に広く分布し,日本では北海道本州に分布する。

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