最新 心理学事典 「ネットワークモデル」の解説
ネットワークモデル
ネットワークモデル
network model
心理学でよく使われるいくつかのネットワークモデルの例を示す。パス解析path analysisは,観測変数間の関連をネットワークで示すモデルである。重回帰分析は,独立変数が複数あり,従属変数は一つの場合であるが,パス解析は,重回帰分析の拡張的側面をもつネットワークモデルである。パス解析では,複数の独立変数と複数の従属変数を同時に解析するが,それぞれの従属変数に対して,すべての独立変数が影響するというフルモデルではなく,そのうちのいくつかのみが関連すると想定する。また,パス解析では従属変数は別の従属変数を説明することも可能であり,モデルは多層的である。構造方程式モデルstructural equation model(SEM)は,パス解析をさらに拡張し,潜在変数を因果のモデルに組み入れるモデルである。
ネットワークモデルの構築は,変数間の関連を示す指標(ピアソンの積率相関係数および順位尺度間の相関係数,その他の類似性指標,距離,変数が名義尺度の場合のカイ2乗値およびその関数など)をデータ行列にまとめ,データに当てはまりの良いグラフを採用する手続きによるのが一般的である。
それぞれのノードの不確定性を主観確率で表現するモデルはベイジアンネットワークモデルBayesian network modelとよばれる。どのノードからも,アークの矢が届かないノードは親ノードとよばれる。このノードの不確定性は,主観確率によって評価され,アークが条件つき確率を示すならば,すべてのノードの不確定性が評価できる。いくつかのノードが実際にデータによって真偽がはっきりすれば,これを所与のものとして,モデルに含まれる変数のすべてについて主観確率の値を更新する。これはデータによる学習である。
データの当てはまりを評価し,ネットワークモデル間の比較を可能とする統計的基準は数多く提案されている。得られたデータから計算される変数間の関連を示す関連行列と推定されたモデルから計算される推定行列との適合度(および自由度などによる調整)や,将来ありうるデータとの当てはまりの良さを評価する情報量規準,直接的にデータからモデルの信用性を比較評価するベイズ因数Bayes factorなどである。
そのほかに,古くからネットワークモデルとよばれるものとしてニューラルネットワークモデルneural network modelがある。これは脳内のニューロンの発火を単純にモデル化したものである。単純なモデルでは,脳内の情報の流れを入力層,中間層(潜在層,介在層),出力層と階層的に表現する。それぞれのニューロンが発火し,次の層へ伝達するモデルとして,階段関数やシグモイド関数(ロジステッィク曲線)が代表的である。
〔繁桝 算男〕
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