ノリクム(読み)のりくむ(英語表記)Noricum

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノリクム」の意味・わかりやすい解説

ノリクム
Noricum

古代ローマ時代のドナウ川南部,オーストリア中央部,バイエルンの一部を含む地域の名称。初期のケルト王国のノリクムは周辺地方を含め,さらに広大な地域であったが,前2世紀末頃,ゲルマンキンブリ族猛攻を受けた際,ローマの救援を得,その後はローマの保護下に入り,後期ラ・テーヌ時代の優秀な文化を発達させた。やがて前 15年頃ローマに併合されて属州となり,急速にローマ化が進められた。鉱物資源,特に鉄と金の産出で知られ,原鉄は多量にローマに輸出され,ノリクムの刀剣は前1世紀の詩人ホラチウスの作品にもしばしば歌われている。 167年のマルコマンニ族侵入をはじめゲルマン諸族の攻撃が続いたが,5世紀末までにフランク族ゴート人が定住するにいたった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノリクム」の意味・わかりやすい解説

ノリクム
のりくむ
Noricum

古代ローマ帝国の属州。アルプス東部、ドナウ川南岸の地域で、パンノニアラエティアの間に位置する。ほぼ今日のオーストリアにあたる。先住民はイリリア系であったがしだいにケルト化し、紀元前2世紀にはノリクム王国ができた。前15年ごろ、比較的平和のうちにローマに併合され、徐々に属州統治の機構が整備された。ディオクレティアヌス帝の帝国再編で2州に分けられた。紀元後4世紀末以後、民族移動の場となり、ゲルマン系諸部族、フン人、スラブ人、アバール人などが相次いで侵入し、6世紀末にはイタリアとの関係は完全に断たれた。

[市川雅俊]

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