改訂新版 世界大百科事典 「ハコエビ」の意味・わかりやすい解説
ハコエビ (箱海老)
Linuparus trigonus
十脚目イセエビ科の甲殻類。食用エビで,房総半島から南シナ海まで分布し,ハワイからも記録がある。体長35cmに達する大型種であるが,肉質が硬いことと個体数が多くないことから水産業上はあまり重要種ではない。東シナ海や黄海の水深30~100mの泥底で漁獲されるため,長崎や下関などの水揚地ではドロエビと呼ぶことが多い。二枚貝やゴカイを食べているらしい。甲は著しく硬い。甲の形が箱のように見えるのでこの名がある。頭胸甲の中央よりやや前方に頸溝(けいこう)があり,それより後方では背を中線とその両側に縦走する稜がある。そのため頭胸甲の断面は五角形を呈し,これがイセエビ類のプエルルス幼生と同形であることから,分類学的にはイセエビ類よりも下等な位置に置かれる。第2触角は扁平な太い棒状で,頭胸甲の2倍に達する。第2~5腹節の側甲下縁にはそれぞれ3本のとげがある。胸脚にはさみはないが,雌の第5脚だけが不完全なはさみを形成し,卵の清掃などに使われる。頭胸甲,腹部とも紫赤色で,黄白色の不規則斑がある。同属の化石種は約25種であるが,現生種は3種のみ。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報