ハーバート(読み)はーばーと(英語表記)1st Baron Herbert of Cherbury, Edward Herbert

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハーバート」の意味・わかりやすい解説

ハーバート(1st Baron Herbert of Cherbury, Edward Herbert)
はーばーと
1st Baron Herbert of Cherbury, Edward Herbert
(1583―1648)

イギリス理神論者、哲学者、軍人外交官詩人オックスフォード大学に学ぶ。アリストテレスキケロのほか新プラトン主義、新ストア主義、懐疑論の影響を受けるが、F・ベーコンや17世紀の自然科学の流れには無縁であった。彼は真理の基準を個人の内面的確信、伝統、権威などに置くことに反対し、理性による「普遍的な同意」に求めた。人間の自然的本能には生得的な「共通概念」があり、なかでも宗教の場合には五つの共通概念がすべての宗教の基本となるとした。このように彼は理性宗教ないし自然宗教を規定し、その実質を現世的徳に求めた。この点での理神論の父とよばれるが、またデカルトガッサンディにも強い影響を及ぼした。

[小池英光 2015年7月21日]


ハーバート(George Herbert)
はーばーと
George Herbert
(1593―1633)

イギリスの形而上派詩人(メタフィジカル・ポエット)、司祭。ケンブリッジ大学時代にベーコン、ダン親交をもち、宮廷での活躍を期待されつつも生涯田舎(いなか)で聖職者として生きた。精神的自叙伝ともいえる詩集聖堂』(1633)には、世俗的関心と信仰の間を揺れ動く鋭い自己分析がみられ、キリスト教的な表象(タイポロジー)形式のなかに、知的に抑制された自然や日常的なイメージを用いて、静かに聖なる世界の痕跡(こんせき)を発見している。

[樋渡雅弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハーバート」の意味・わかりやすい解説

ハーバート
Herbert, George

[生]1593.4.3. ウェールズ,モントゴメリー
[没]1633.3.1. ベマートン
イギリスの詩人,聖職者。ハーバート・オブ・チャーベリーの弟。ケンブリッジ大学出身。名門出の俊英で,宮廷での活躍を期待されたが,「田舎司祭」として静かな生涯を終えた。死の直前友人ニコラス・フェラーに送って出版か焼却かをまかせた詩集『聖堂』 The Temple (1633) によって,宗教的形而上詩人としての不動の地歩を占めている。

ハーバート
Herbert, Sidney, 1st Baron Herbert of Lea

[生]1810.9.16. サリー,リッチモンド
[没]1861.8.2. ウィルトシャー,ソールズベリー
イギリスの政治家。オックスフォード大学に学び,1832年以降下院議員。ピール派の一員として頭角を現し,閣僚を歴任。クリミア戦争の際陸相として F.ナイチンゲールと協力,軍の衛生状態改善に貢献。 60年男爵。

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