ガッサンディ(読み)がっさんでぃ(英語表記)Pierre Gassendi (Gassend)

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガッサンディ」の意味・わかりやすい解説

ガッサンディ
がっさんでぃ
Pierre Gassendi (Gassend)
(1592―1655)

フランスの哲学者、自然学者。南フランス、シャンテルシエの農家の出身。1614年アビニョンで神学博士となり、エクス大学の哲学教授、ディーニュの主任司祭、パリのコレージュ・ロアイヤルの数学教授を歴任する。水星の太陽面通過の観測や音速測定など個別的業績もあるが、彼の歴史的意義はおもに思想的側面にある。1649年以降、宇宙論において地動説を擁護し、自然学においてはエピクロス原子論を採用し、反アリストテレスの論陣を張った。後者の影響は大きく、原子論の歴史的復活に大いに力があった。真空の存在を認めないデカルト説とも対立した。さらに認識論においてデカルトの「生得観念」に反対し、認識の起源を感覚に求めた。この点で、ロックらの経験哲学の先駆をなした。司祭として、神に自然の統括をゆだねるという矛盾をもっていたが、17世紀の機械論的唯物論者の代表者であった。

[肱岡義人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガッサンディ」の意味・わかりやすい解説

ガッサンディ
Gassendi, Pierre

[生]1592.1.22. プロバンス,シャンテルシエ
[没]1655.10.24. パリ
フランスの哲学者,科学者,司祭。 1617~23年エクス (エクサンプロバンス) の哲学教授。 45年コレージュ・ロワイヤル (コレージュ・ド・フランスの前身) の数学教授。彼の哲学的立場は懐疑論エピクロス主義に要約される。彼の懐疑論は,絶対的懐疑論と独断論の中間をいく穏健なもので,われわれの知識の源泉は感覚であり,真実在を認識することはできないが,経験からの帰納によって現象界を説明することができる,とする。最もすぐれた現象説明の体系として,彼はエピクロス的原子論を仮説として提示し,これをキリスト教調和させようとして,魂の不死や知性の一般概念形成能力を認めた。道徳論でもエピクロスに従って,心身の調和のうちに幸福を認めた。 R.デカルトと対立して激しい論争を展開した彼の哲学は,J.ロックの経験論や近世唯物論に大きな影響を与えた。主著『哲学体系論』 Syntagma Philosophicum (1658) ,"Exercitationes paradoxicae adversus Aristotelaeos" (24) ,"Disquisitiones Anticartesianae" (43) ,"De vita,Moribus et doctrina Epicuri" (47) など。

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