食の医学館 「ハーブ・スパイスの種類」の解説
はーぶすぱいすのしゅるい【ハーブ・スパイスの種類】
人類とハーブ、スパイスのかかわりは極めて古く、数千年以上も前から食生活をはじめ、薬用、宗教儀式などに欠かせないものでした。とくに、肉食が主体のヨーロッパでは臭み消しや中毒予防のため、コショウなどのスパイスが非常に珍重され、中世には金銀に匹敵する値段で取り引きされたほどです。
日本でもワサビやサンショウなどが、薬味として古くから用いられており、さらに明治時代以後、洋食の普及とともに外国のハーブ、スパイスが一般化。今日では、世界有数のスパイス輸入国となっています。
ちなみに、現在、世界中で使われているハーブ、スパイス類は350~500種類。そのうち日本で使われているものだけでも、100種類に達します。
ところで、何気なく使っている「ハーブ」「スパイス」という言葉ですが、日本にはそれに関する厳密な定義はありません。ただ一般的には、利用する部位をもとに、以下のように分類することが多いようです。
(1)葉や花を用いる「ハーブ」
バジル、ミント、セージ、ローズマリー、ジャスミン、ローズなど。
(2)それ自体が主材料にもなる「香味(こうみ)野菜」
タマネギ、セロリ、クレソン、パセリなど。
(3)果実、つぼみ、樹皮、根、茎を用いる「スパイシー・スパイス」
コショウ、トウガラシ、シナモン、クローブなど。
(4)種子を用いる「シード・スパイス」
マスタード、カルダモン、アニス、キャラウェイ、クミンなど。
(5)(1)~(4)を複数混ぜた「混合スパイス」
カレー粉、五香粉(ごこうふん)、七味トウガラシなど。
(この『食の医学館』では(1)(2)をハーブ、(3)(4)をスパイスとして、具体的品目を紹介しています)
これらハーブやスパイスの最大の特徴である香りのもとは、揮発性の芳香成分で、それがいくつも組み合わさって、固有の香りを生んでいます。こうした芳香成分は、個々のハーブ、スパイスのなかに数%程度含まれているだけで、料理に使われた場合、全体に占める割合は0.01~0.001%にすぎません。にもかかわらず、それが料理の味を左右するわけですから、芳香成分のもつパワーの大きさがわかるでしょう。
《現在、約30種類のハーブ、スパイスが薬の原料に》
ハーブ、スパイスといえば、料理の風味付けや素材の臭み消しに欠かせない台所の名脇役。また、ハーブティーのように、その香り自体を嗜好品(しこうひん)として楽しむ利用法も人気があります。
さらに、忘れてならない大きな魅力が、健康に対するさまざまな効用です。
もともとハーブやスパイスは、調味料に用いられる以前から、食糧の保存剤、あるいは薬として利用されていました。
実際、ハーブやスパイスに含まれる成分には抗菌作用、抗酸化作用があること、辛みやにがみなどの刺激が消化器官への血流を促進し、その働きを活発化することは医学的に証明済み。健康食品や医薬品の材料としても、さまざまなハーブやスパイスが、広く利用されています。
最近では、こうした健康的側面に注目が集まるとともに、アロマテラピーやインド古来の医術アーユルヴェーダなど、ハーブ、スパイスを用いた伝統的医学処方も見直されているのです。
もちろん、こうした専門的処方にかぎらず、調味料として食生活に取り入れることでも、塩分、糖分、脂肪分をひかえて、おいしい健康的なメニューがつくれます。健康維持や病気の予防のため、ハーブやスパイスをじょうずに利用したいものです。