セリ科の一年草。弱々しい感じの植物で,高さ20~30cm。茎の下部につく葉は長柄があって卵形。上部の葉の葉柄は1~2cmで,葉身は全裂し,末端は長さ1~5cmの糸状になる。晩春に淡紅色または白色の小花をつける。果実は細い楕円形で長さ4~7mm。クミン実といって,カルム実(キャラウェー)の代用にする。成分はクミナール(CH3)2・CH・C6H4・CHOを含み,これが焼けるような辛みのもとである。スパイスとしてはチーズ,ザウアークラウト(酢漬けキャベツ),カレー粉原料,チリパウダーに混ぜる。スープ,シチュー,ライス料理に用いる。菓子用としてはパンやケーキ類の香りづけに使う。地中海沿岸の原産で,栽培の歴史は古く,聖書《マタイ伝》に出てくる。モロッコやイラン地方にも多く,インド,中国でも利用されている。日本へは文政年間(1818-30)に渡来した。なお,日本では,本種と近縁のキャラウェーおよびイノンドをみなヒメウイキョウと呼ぶことがあるので注意を要する。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
セリ科(APG分類:セリ科)の一年草。高さ約30センチメートル、茎は根元からも分枝し、葉はウイキョウのように細い線状に分裂し、無毛。複散形花序の小包片と総包片はいずれも細く線状に3裂し、花柄よりも長いのが特徴となる。花は白色あるいは紅色。果実は長さ約6ミリメートル、幅1.5ミリメートル、長楕円(ちょうだえん)形で両端はとがり、果皮にだけ毛がある。この果実をクミンと称して薬や料理、菓子の香辛料に用いる。原産地はトルキスタンで、現在はヨーロッパ南西部、北アフリカ、北アメリカ、インド、中国、シリア、チリで栽培され、また野生化している。治療薬としては健胃、整腸、鎮痙(ちんけい)、鎮静に用いられる。
[長沢元夫 2021年11月17日]
香辛料として用いられるのは長さ6ミリメートルくらいの種子で、クミンシードともいわれ、強い芳香と辛味とほろ苦味をもつ。もっとも古くから使われている香辛料で、古代エジプトの薬用植物一覧表、紀元前1500年に書かれた『エバース古文書』、『新約聖書』の「マタイ伝」第23章などにも記述がある。カレー粉やチリパウダーの重要な成分の一つで、スープ、シチュー、ケーキ、ピクルス、チーズ、ソーセージ、チャツネにもよくあう。
[齋藤 浩 2021年11月17日]
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