日本大百科全書(ニッポニカ) 「バカラック」の意味・わかりやすい解説
バカラック
ばからっく
Burt Bacharach
(1928―2023)
アメリカの作曲家、指揮者、ピアノ奏者。ミズーリ州カンザス・シティに生まれ、ニューヨークで育つ。小学生のときからピアノを学ぶ。高校時代にジャズを知って仲間と楽団を結成。マクギル大学とマンズ音楽学校を経てウエスト音楽アカデミーに入り、作曲家ダリウス・ミヨー、ヘンリー・カウエルHenry Cowell(1897―1965)らに師事。1950年から1952年まで陸軍の兵士慰問機関に勤務し、1953年に歌手ビック・ダモーンVic Damone(1928―2018)の伴奏者として音楽界に入り、作曲と編曲も行う。1956年に作詞家ハル・デビッドHal David(1921―2012)に出会い、共作の『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』The Story of My Lifeがマーティー・ロビンズMarty Robbins(1925―1982)のレコードで1957年に初のヒットとなる。1958~1961年マレーネ・ディートリヒの伴奏者を務めた後、1962年からハルとのコンビで歌曲づくりに専念した。彼らが育てた歌手ディオンヌ・ワーウィックDionne Warwick(1940― )による『ドント・メイク・ミー・オーバー』Don't make me over, man!(1962)、『ウォーク・オン・バイ』Walk on by(1964)、『小さな願い』I Say a Little Prayer(1967)などを皮切りにヒットが続出。大胆な転調や変拍子、リズムとサウンドにも独自のくふうを示す異色の作風で大作曲家の列に加わった。
1968年にはミュージカル『プロミセス、プロミセス』Promises, Promisesの音楽を担当して成功を収める。続いて映画『明日に向って撃て!』(1969)ではアカデミー作曲賞を受け、同映画の主題歌『雨にぬれても』Raindrops Keep Fallin' on My Headと1981年の映画『ミスター・アーサー』の主題歌『ニューヨーク・シティ・セレナーデ(アーサーのテーマ)』Arthur's Theme (Best That You Can Do)でアカデミー主題歌賞を受賞するなど、映画音楽でも活躍した。歌手・ソングライターのキャロル・ベイヤー・セーガーCarole Bayer Sager(1946― )と1982年に結婚(1991年離婚)。共作に前記『ニューヨーク・シティ・セレナーデ』、1986年度グラミー賞最優秀歌曲賞受賞の『愛のハーモニー』That's What Friends Are Forなどがある。そのほか『サンホセへの道』Do You Know the Way to San Jose?、『クロース・トゥ・ユー』(They Long to Be) Close to You、『ルック・オブ・ラブ』Look of Loveなど多くのヒット作がある。
[青木 啓 2018年2月16日]