イタリアのバイオリン奏者、作曲家。生地ジェノバおよびパルマでバイオリンや作曲を学ぶ。幼少時から天才ぶりを発揮、10代なかばで北イタリア各地を演奏旅行し名声を獲得したが、1801年突然演奏活動をやめた。05年ルッカの宮廷に招かれ、その後演奏旅行も再開した。健康上の理由で5年間にわたり活動を中断したのち、ヨーロッパ各地へ演奏旅行し、28年のウィーン、29年のベルリン、31年のパリやロンドンにおける演奏は、かつて例をみないほどのセンセーションを巻き起こした。また波瀾(はらん)に富んだ生活、名声、当時他に例をみない独特な演奏法により、多くの伝説的なエピソードを生んだ。32年ごろから健康悪化、しだいに演奏から退き、40年ニースで没した。
パガニーニは演奏の際技巧を秘術的に隠す演出をし、弟子をほとんど育成しなかったため、その奏法は後世に伝わらなかった。彼は楽器の表現力の極限まで用いようとし、そのために特別な調弦法、左手によるピッチカートなどを採用、また極端な音域も使った。運弓法も、すばやいスタッカートや、それにレガートを組み合わせるなど、多様な演奏方法がくふうされた。彼は弦の1本を外したまま演奏会を行うなど、曲芸的な演奏も披露した。パガニーニの演奏と強烈な表出力は同時代の作曲家に強い刺激を与えた。
彼の技巧や表現法は彼自身の作品、とくに『無伴奏バイオリンのための24の奇想曲』に集約されている(このなかの旋律によりシューマン、リスト、ブラームスはピアノ曲を編・作曲している)。ほかに6曲のバイオリン協奏曲(第2番の第3楽章「鐘」La campanellaが有名で、リストはこの主題によりピアノ独奏曲をつくっている)、彼の好んだギターのための作品などを残している。
[美山良夫]
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イタリアのバイオリン奏者,作曲家。11歳で最初の公開演奏会を行い,その後奔放な生活を送りながら,イタリアやヨーロッパ各地で鬼才としての声望と富を獲得した。その演奏は,タルティーニやビオッティに代表される18世紀の古典的奏法とは異なり,ロカテリらの華麗な技巧の追求を受け継ぐもので,リスト,ショパンなどロマン派によるピアノ技法の可能性の拡大にも大きな刺激を与えた。速いスタッカート,二重フラジョレット,左手のピッチカートと右手の弓奏の併用などを主とする〈悪魔的〉とも評されたその妙技は,ごく限られた弟子しかもたなかったが,C.A.deベリオ,ビュータンらによって熱心に研究され,模倣された。今日でもしばしば演奏される代表作としては,独奏バイオリンのための《24のカプリッチョ》(1820)のほかに,《バイオリン協奏曲第1番ニ長調》《同第2番ロ短調》がある。
執筆者:片山 千佳子
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…40年プロコフィエフの《ロミオとジュリエット》を振付け,踊りとマイムの結合によって登場人物の性格と心理を描きわけ,巧みな群衆の処理によって壮大な舞踊劇を創造した。ラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》を用いた1幕物《パガニーニ》(1960)も佳作に数えられ,また44年に振付けた《ジゼル》は古典を現代に生かしたもっともすぐれた改訂版とされている。【野崎 韶夫】。…
…とくに有名な前者では,愛人の住む土地の名前と作曲者自身の姓の綴りから抽出したA,S,C,Hの文字を音名に読みかえて音楽のモティーフを作り,このモティーフから《前口上》《オイゼビウス》《フロレスタン》《ショパン》《休息》《ペリシテ人と戦うダビド同盟の行進》など21の小曲を紡ぎ出す。ほかにパガニーニの《ベネチアの謝肉祭》(1829),ベルリオーズの序曲《ローマの謝肉祭》(1834。本来はオペラ《ベンベヌート・チェリーニ》の第2幕への序曲),サン・サーンスの2台のピアノを含む室内楽組曲《動物の謝肉祭》(1886)などがよく知られている。…
… 19世紀に入ると,イタリアではオペラの隆盛に伴ってバイオリンの衰退が始まった。ただ例外的に,パガニーニの演奏技法の極限までの追求は,19世紀前半のバイオリン演奏に大きな影響を与え,ロマン派のピアノの名人芸的演奏への刺激剤となった。彼の作品のなかで最も有名なものは高度の技巧を展開した《無伴奏バイオリンのための24のカプリス》(1820)である。…
…ベルリオーズとワーグナー,ピアノにおけるショパンの天才性は,この意味で非古典的ロマン性を代表する一方の極に置けるだろう。パガニーニ,リストらの代表する名人芸の要素も,古典派にない奔放な表現の可能性を〈天才〉に与えている。この時代,ピアノは金属フレームで大きく発展し,オーケストラも現在の性能に近づいた。…
※「パガニーニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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