日本大百科全書(ニッポニカ) 「パガニーニ」の意味・わかりやすい解説
パガニーニ
ぱがにーに
Niccolò Paganini
(1782―1840)
イタリアのバイオリン奏者、作曲家。生地ジェノバおよびパルマでバイオリンや作曲を学ぶ。幼少時から天才ぶりを発揮、10代なかばで北イタリア各地を演奏旅行し名声を獲得したが、1801年突然演奏活動をやめた。05年ルッカの宮廷に招かれ、その後演奏旅行も再開した。健康上の理由で5年間にわたり活動を中断したのち、ヨーロッパ各地へ演奏旅行し、28年のウィーン、29年のベルリン、31年のパリやロンドンにおける演奏は、かつて例をみないほどのセンセーションを巻き起こした。また波瀾(はらん)に富んだ生活、名声、当時他に例をみない独特な演奏法により、多くの伝説的なエピソードを生んだ。32年ごろから健康悪化、しだいに演奏から退き、40年ニースで没した。
パガニーニは演奏の際技巧を秘術的に隠す演出をし、弟子をほとんど育成しなかったため、その奏法は後世に伝わらなかった。彼は楽器の表現力の極限まで用いようとし、そのために特別な調弦法、左手によるピッチカートなどを採用、また極端な音域も使った。運弓法も、すばやいスタッカートや、それにレガートを組み合わせるなど、多様な演奏方法がくふうされた。彼は弦の1本を外したまま演奏会を行うなど、曲芸的な演奏も披露した。パガニーニの演奏と強烈な表出力は同時代の作曲家に強い刺激を与えた。
彼の技巧や表現法は彼自身の作品、とくに『無伴奏バイオリンのための24の奇想曲』に集約されている(このなかの旋律によりシューマン、リスト、ブラームスはピアノ曲を編・作曲している)。ほかに6曲のバイオリン協奏曲(第2番の第3楽章「鐘」La campanellaが有名で、リストはこの主題によりピアノ独奏曲をつくっている)、彼の好んだギターのための作品などを残している。
[美山良夫]