ブルガリア生まれ、アメリカ国籍の画家だが、エコール・ド・パリの1人として名高い。本名Julius Pincas。ウィーン、ベルリン、ミュンヘンなどで学び、1905年パリに出て、モンマルトル、ついでモンパルナスに住み、第一次世界大戦中はロンドン、アメリカなどに難を避け、20年パリに帰る。戦前の仕事は版画を主としたが、このころから油彩に専念。柔らかな筆致、薄くのばされた淡い色彩で、とくに裸体あるいは半裸の女性たち、娼婦(しょうふ)たちを好んで描き、20年代のパリの哀愁と甘美、同時に、スペイン系ユダヤ人を父にもち、生涯をボヘミアンとして過ごした彼自身の内面の不安を表現した。しかし、アルコール、麻薬などで彼の肉体はしだいにむしばまれ、パリで自殺。代表作は『眠る2人の女』(1929・パリ市近代美術館)など。
[中山公男]
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