改訂新版 世界大百科事典 「スザンナ」の意味・わかりやすい解説
スザンナ
Susanna
旧約聖書外典《ダニエル書》13章に登場する人物。バビロンに住むヨアキムの妻で,美しく敬虔な女性であった。あるとき邪悪なふたりの長老に入浴中の姿をのぞき見られ,逆に姦通の罪で誣告(ぶこく)されるが,死罪宣告の寸前に,ダニエルの知恵によって無実が証明される。スザンナの物語は初期キリスト教時代から美術の主題としてとりあげられ,《ブレシアの象牙製遺物匣(はこ)》(4世紀)には〈庭園のスザンナ〉〈ダニエルの前にひきだされるスザンナ〉〈祈るスザンナ〉の場面が描かれている。このほか,初期キリスト教美術や中世美術では〈オランス(祈る人)〉の姿をとるスザンナの単独像が,カタコンベ壁画や石棺浮彫,教会堂装飾などに数多く見られるが,ルネサンス以降になると美しい裸体を表現するための〈スザンナの入浴〉の場面が多く描かれるようになった。
執筆者:浅野 和生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報