パミラ(読み)ぱみら(その他表記)Pamela, or Virtue Rewarded

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パミラ」の意味・わかりやすい解説

パミラ
ぱみら
Pamela, or Virtue Rewarded

イギリス小説家サムエル・リチャードソン書簡体小説。1740年刊。副題美徳報酬」が示すように、美しい小間使いパミラが、その信仰貞操を守る強い意志によって若主人誘惑をはねつけ、ついに彼を改心させて地主夫人となるという話。彼女が父親に書く手紙や、閉じ込められたときの日記という形式で物語が進行する。飾り気のない文体で細かな描写が生きているが、貞操をなるべく高く売りつけよという道徳を説くものとして、当時かなり激しく批判された。

[岡 照雄]

『海老池俊治訳『パミラ』(『世界文学大系76』1966・筑摩書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「パミラ」の意味・わかりやすい解説

パミラ
Pamela

イギリスの小説家S.リチャードソンの同名の書簡体小説(1740)の女主人公。主人の息子Bは女中パミラPamela Andrewsを情欲の対象とし,手練手管を弄して誘惑するが,パミラの操は固く,また賢く振るまい,ついにBは彼女を正式な妻とする。作者はこの結末をパミラの〈美徳の報いVirtue Rewarded〉(この小説の別題)であるとしたが,出版後,偽善的・打算的であるとの反発も招き,H.フィールディングはパロディとして《シャミラ》(1741)を発表した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パミラ」の意味・わかりやすい解説

パミラ
Pamela, or Virtue Rewarded

イギリスの小説家 S.リチャードソンの書簡体小説。 1740年刊。女中奉公に上がったパミラが曲折を経て主人と結婚するまでを,父親,友人らとの手紙のやりとりのうちに描く。副題に「徳高きものは報われる」とあるとおり,説教調が露骨な作品であるが,当時社会的に進出してきた市民階級モラルリアリズムの手法で描き,それまでの非現実的な恋愛や冒険を描くロマンス類とはまったく違った世界を表現して圧倒的な人気を博した。この作品によってイギリス小説が明確な形で出現し,印刷業者リチャードソンは小説の始祖として名を残すことになった。

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