改訂新版 世界大百科事典 「パンタレオーニ」の意味・わかりやすい解説
パンタレオーニ
Maffeo Pantaleoni
生没年:1857-1924
イタリアの経済学者,時事評論家,教育者。L.ワルラスの経済学を最も早い時期に理解し,限界効用理論に基づく経済学をイタリアおよびラテン諸国に広めたことで知られる。
イタリア人を父としイギリス人を母としてローマに近いフラスカーティに生まれ,ローマ大学で法律を学ぶ。その後,経済学と財政金融問題に関心を抱き,《租税転嫁の理論--転嫁の定義,動学,遍在》(1882)によって教授資格を取得,いくつかの大学や高等商業学校で教鞭をとる。1902年,当時イタリア経済学の最高峰といわれたアンジェロ・メッサダリアの後を継ぎローマ大学経済学教授となり,没年までこの地位にあった。カブールの友人であった父と同様,政治にも関与し,とくに,ダンヌンツィオのフィウメ自由国(現,ユーゴスラビア領リエカ)に財政担当者として協力した。
パンタレオーニの経済学者としての名を高めた《純粋経済学原理》(1889)は,D.リカードの経済学とH.ゴッセン,S.ジェボンズの効用理論の総合であり,A.マーシャルの影響が認められる。独自の理論上の貢献はないとはいえ《原理》は,パンタレオーニの独創性が発揮された数々の論文や講演とともに,限界効用理論に基づく経済学へとイタリアの経済学の流れを変える強い推進力となった。パンタレオーニの影響下で研究を始めた経済学者のなかには,V.パレートとE.バローネがいる。またパンタレオーニは,ワルラスにパレートを見いださせ,パレートがローザンヌにおけるワルラスの後継者となる端緒をつくった。
国家の役割は必要な最小限に限定されるべきであるが,その限定された範囲内では,国家権力は絶対であるという考えをもつパンタレオーニは,ムッソリーニのファシスト政権について,政治の破局と文明の破局とからイタリアを救うものと評価した。
執筆者:神谷 傳造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報