日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェボンズ」の意味・わかりやすい解説
ジェボンズ
じぇぼんず
William Stanley Jevons
(1835―1882)
イギリスの経済学者、論理学者。ロンドンのユニバーシティ・カレッジで地質学や植物学を学んだが、家庭の経済的困窮のため、学業なかば、18歳でオーストラリアの造幣局に赴任した。1859年に帰国、復学して、経済学、論理学、数学などを学び、66年マンチェスターのオーウェン・カレッジ教授となる。76年から母校の教授を務めたが、80年教授職を辞し、82年夏遊泳中死去した。
ジェボンズは、C・メンガー、L・ワルラスとともに、わが国での通称「近代経済学」の体系的出発を画する限界革命を担ったトリオの一人であり、その主著『経済学の理論』Theory of Political Economy(1871)では、生産費説にたつ古典派経済学を鋭く批判し、経済学を快楽・苦痛の微積分学として革命化しようとした。そのほか、当時イギリスの動力源だった石炭の早晩の枯渇を予言してベストセラーになった『石炭問題』Coal Question(1865)をはじめ、貨幣論、景気循環論(太陽黒点説でも有名)の優れた理論的・経験的研究や、論理学、科学方法論面での重要な業績など、多くの著書がある。なお1972年からR・D・C・ブラックの編集により、多数の新資料を含む『ジェボンズ文書・書簡集』Papers and Correspondence of William Stanley Jevons全7巻(1972~81)が公刊された。
[早坂 忠]
『小泉信三他訳『経済学の理論』(1944・日本評論社)』