翻訳|campaign
中世末には収穫期後,そこで戦闘の行われる開けた土地,場所を意味したが,漸次戦闘行為そのものを指す名称に転化した。近代に入って,軍事,戦闘に類比できる,目標の到達可能で,明確な,多く打倒すべき〈敵〉のある,短期の激烈かつ集中的なコミュニケーション活動を指示する言葉に拡散し,政治(とくに選挙,政戦),メディア(言論戦)の各次元で多用される。言葉,イメージによる戦闘であっても,送り手の目的意識,作戦計画などがあることはいうまでもない。しばしば類縁関係にあるが,マス・メディアのプレス・キャンペーンpress campaignと広告活動のキャンペーンとを区別してみたほうがよい。
一定期間に特定の問題についての論,記事を集中し,目的意識的に特定方向での問題解決を図る〈世論〉形成を行おうとするメディア活動をキャンペーンと称するのは,アメリカ,イギリスでは,ほぼ1860年代から20世紀初頭,日本では《万朝報(よろずちようほう)》《二六新報》などの活動する明治30年代のことである。多かれ少なかれ,民衆主義的色彩をもった初期大衆新聞の勃興期である。彼らは,民衆の立場に立って,政治・社会の不正・腐敗を糾弾するという形で熱烈な筆陣を展開する。勝ち負けはさまざまであり,センセーショナルな話題,イベント造出による部数拡大の動機がかくされていたにもせよ,メディアの役割をある側面最大限にたかめるのに貢献した。多様化した膨大な受け手をもつ現代のマス・メディアのキャンペーンは,対象テーマが政治的に無色透明,〈脱〉イデオロギー,だれも反対ではない,スマートではあるが抽象的なもの,にせばめられていく傾向がある。それらに,敵対者相互の運命を決した軍事用語に由来する言葉をあてはめていてよいのかどうか。原義のニュアンスは,むしろ広告キャンペーンに連続しているかにみえる。
執筆者:香内 三郎
広告キャンペーンが目標達成の手段・技術として日本に定着したのは,1960年代から70年代にかけての高度成長期で,いくつかの大規模なキャンペーンが華々しい成功を収めたことによる。1962年には,繊維,化粧品,電機,自動車,食品などの異種企業が連合して,〈シャーベット・トーン〉という新しい色調をテーマにしたキャンペーンを行った。この成功で,キャンペーンの効果が注目され,その後多くのキャンペーンが生まれる契機となった。63年の〈バカンス〉キャンペーンでは,東レが中心となり,20社近い企業が参加し,〈バカンス〉(フランス語で休暇の意味)という言葉を普及させ,キャンペーンとしては空前の成功を収めた。このような異業種連合による大規模なものは,コンビナート・キャンペーンと呼ばれた。その後,化粧品の季節ごとのキャンペーンや食品のプレミアム・セールのキャンペーンなど,毎年定例的に行われるものが増え,方法として定着した。ただし,80年代に入ってからは,消費者の多様化に伴って,キャンペーンの効果が減少してきたという見方もある。
執筆者:星野 匡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 (株)トライベック・ブランド戦略研究所ブランド用語集について 情報
…語源的にはカンパネラすなわちヨーロッパ中世の都市における市会議事堂の大鐘に由来し,その合図で市民は武器をとって立ったという。英語のキャンペーンcampaignに通じ選挙運動や平和運動などに広く用いられる。もっとも今日の日常用語で,〈カンパ〉とは街頭でよく見られるような政治・社会団体の資金募集への大衆参加として,いわゆる資金カンパを意味することが多い。…
※「キャンペーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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