俳諧の連句集。珍碩(ちんせき)編。1690年(元禄3)刊。《俳諧七部集》の第4集。“おくのほそ道”の旅から帰った芭蕉を迎え,湖南蕉門の珍碩,曲水,乙州(おとくに)らが催した歌仙5巻を収める。去来が〈故翁(芭蕉)奥州の行脚より都へ越えたまひける,当門の俳諧すでに一変す(略)《瓢(ひさご)》《さるみの》是(これ)なり〉(《俳諧問答》)と説くとおり,“おくのほそ道”がもたらした新風のくふうが結実した集である。とりわけ,巻頭を飾る芭蕉の〈木のもとに汁も鱠(なます)も桜かな〉を発句とする珍碩・曲水との三吟歌仙は,〈軽み〉の俳諧として名高い。当時,〈観相〉と呼ばれる矮小で俗っぽい観念句が流行しており,本書の〈軽み〉はそれを打破して俳諧を〈不易(ふえき)流行〉へと導く役割を果たした。書名は,《荘子》の〈逍遥遊〉に出る恵子(けいし)の故事によったというが,〈軽み〉を象徴する命名とも解される。
執筆者:乾 裕幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
俳諧撰集(はいかいせんしゅう)。一冊。珍碩(ちんせき)編。1690年(元禄3)刊。「俳諧七部集」の第四集。書名は『荘子』逍遙遊篇(しょうようゆうへん)にある恵子(けいし)の故事による。「おくのほそ道」の旅を終えた芭蕉(ばしょう)を近江(おうみ)に迎えて、湖南の蕉門の人々が師の指導の下に興行した歌仙五巻を収めたもの。体裁は『冬の日』に倣い連句のみを収めるが、とくに巻頭の「木(こ)のもとに汁も鱠(なます)も桜かな」を発句(ほっく)とする芭蕉、珍碩、曲水の三吟歌仙は、かるみの志向を示す早い例として知られ、その優れた技量は、芭蕉のほそ道行脚(あんぎゃ)後の新風を示すものとして高く評価されている。
[雲英末雄]
『中村俊定校注『芭蕉七部集』(岩波文庫)』▽『幸田露伴著『評釈ひさご』(1947・岩波書店)』
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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