不易流行(読み)ふえきりゅうこう

四字熟語を知る辞典「不易流行」の解説

不易流行

まつしょうはいかい理念。伝統を踏まえつつ、一方では新しいものを取り入れることが大切だとする説。

[使用例] 芭蕉が説いたといわるる不易流行の原理は実はあらゆる芸術に通ずるものであろうと思われる[寺田寅彦*天文と俳|1932]

[使用例] これからはことに、たくさんのことが望まれる時代になっていくと思いますから、不易流行で、いつもバランスのよい感覚をお持ちになるのが、とても大切なことだと思っています[桂文珍*落語的笑いのすすめ|2006]

[使用例] これこそが、不易流行のこころ。新しさを求めて、常に変化し移ろう流行の中にこそ、不易なる本質俳諧的な本質が潜む[杉山恒太郞*ピッカピカの一年生を作った男|2015]

[解説] よく聞くことばですが、辞書などでは難しく説明されがちです。「不易流行」の項目を見れば、その辞書がわかりやすいかどうか判断できます。
 要するに、「不易」は変わらないもの、「流行」は変わるもののことです。俳諧でも、他の何事でも、変わらないものを基本にしつつ、状況に応じて柔軟に変わっていくべきだ、ということです。
 「不易流行」の考え方は、芭蕉の門人のむかきょらいの著書「去来抄」で説明されています。ただ、去来は「不易流行」を人の姿にたとえたりして、話をややこしくしています。「不易と流行は元は一つ」とも書いています。正反対のものが一つとは、わかりにくい話です。
 一般的には、「不易と流行のどちらが欠けてもだめ」と考えれば十分です。歌舞伎にしても、昔からの伝統(不易)に基づきつつ、新しいもの(流行)を取り入れています。両方がそろって、初めてうまくいく、ということです。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「不易流行」の解説

不易流行
ふえきりゅうこう

俳論(はいろん)用語。晩年の芭蕉(ばしょう)が、蕉風俳諧(はいかい)の本質をとらえるための理念として提起したもの。「不易」は時代の新古を超越して不変なるもの、「流行」はそのときどきに応じて変化してゆくものを意味するが、両者は本質的に対立するものではなく、真に「流行」を得ればおのずから「不易」を生じ、また真に「不易」に徹すればそのまま「流行」を生ずるものだと考えられている。俳諧の本質的な性格を静的(不易)・動的(流行)の二つの面から把握しようとしたものであるが、新しみを生命とする俳諧においては、その動的な性格――新しみを求めて変化を重ねてゆく流行性こそが、そのまま蕉風不易の本質を意味することになる。結局、「不易」と「流行」の根本は一つのものなのであり、芭蕉はそれを「風雅の誠(まこと)」とよんでいるのである。こうした理念の成立してくる背景には、易学、朱子学、宋(そう)学の思考法や堂上歌学の不易流行論があったが、その論は具体的には『去来抄』や『三冊子(さんぞうし)』など門弟の記述によってみるほかはなく、ために、それぞれ実際には多様な解釈の幅を生じさせている面もある。

[堀切 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「不易流行」の解説

不易流行
ふえきりゅうこう

俳諧の理念。松尾芭蕉元禄2 (1689) 年冬頃から説き始めたという。一般には句の姿の問題として解され,趣向,表現に新奇な点がなく新古を超越した落ち着きのあるものが不易,そのときどきの風尚に従って斬新さを発揮したものが流行と説かれる。しかしまた,俳諧は新しみをもって生命とするから,常にその新しみを求めて変化を重ねていく流行性こそ俳諧の不易の本質であり,不易は俳諧の実現すべき価値の永遠性,流行はその実践における不断変貌を意味するとも説かれる。

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精選版 日本国語大辞典「不易流行」の解説

ふえき‐りゅうこう ‥リウカウ【不易流行】

〘名〙 蕉風俳諧の理念の一つ。新しみを求めてたえず変化する流行性にこそ、永遠に変わることのない不易の本質があり、不易と流行とは根元において一つであるとし、それは風雅の誠に根ざすものだとする説。芭蕉自身が説いた例は見られず、去来・土芳・許六ら門人たちの俳論において展開された。
※俳諧・去来抄(1702‐04)修行「去来曰、不易流行の事は万事に渡る也」

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デジタル大辞泉「不易流行」の解説

ふえき‐りゅうこう〔‐リウカウ〕【不易流行】

蕉風俳諧の理念の一。新しみを求めて変化していく流行性が実は俳諧の不易の本質であり、不易と流行とは根元において結合すべきであるとするもの。

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世界大百科事典 第2版「不易流行」の解説

ふえきりゅうこう【不易流行】

俳諧用語。蕉風俳諧の理論。不易と流行という相反する概念を結合することによって,つねに新しい俳諧美の創出を心がけつつ,なお和歌の一体としての風尚を保たなければならない,俳文学の内部矛盾を克服するために案出された俳理論と考えられるが,蕉門内部においても理解が一致していたとは言いがたい。向井去来(きよらい)は〈蕉門に千歳不易の句,一時流行の句と云ふ有り。を二つに分けてへ給へる。其の元は一つ也〉(《去来抄》)と説き,貞門・談林以来の風体に一貫した正風性を認める歴史的立場に立ち,服部土芳(とほう)は〈師の風雅に万代不易有り,一時の変化有り。

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世界大百科事典内の不易流行の言及

【俳諧問答】より

…〈贈晋氏其角書〉〈贈落柿舎去来書〉〈答許子問難弁〉〈再呈落柿舎先生〉〈俳諧自讃之論〉〈自得発明弁〉〈同門評判〉から成る。去来は“不易流行”論,許六は“血脈”説を前面に打ち出して論をたたかわせており,蕉風俳論書として第一級の価値をもつ。1785年(天明5),浩々舎芳麿により《俳諧問答青根が峰》として出版され,1800年(寛政12)《俳諧問答》の題で再版された。…

※「不易流行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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