ヒシウンカ

改訂新版 世界大百科事典 「ヒシウンカ」の意味・わかりやすい解説

ヒシウンカ

半翅目ヒシウンカ科Cixiidaeの昆虫の総称,またはそのうちの1種を指す。ヒシウンカ類は中型で一見ひし形の外観を有する種が多いためこのように称される。両極を除く世界中に分布し,現在までに1000種以上が知られている。幼虫成虫ともに植物に寄食し,幼虫には植物の根に寄生して地中生活をする種がある。Oliarus属などにはイネなどの農作物に加害する種もあるが重大な害を与えることはない。

 ヒシウンカOliarus apicalisは翅端まで6~8mm。黒色ないし淡褐色で体表はうすい蠟物質でおおわれている。翅はわずかに淡黄褐色を帯び半透明。雄の翅端は濃い褐色となることが多い。本州,四国,九州,朝鮮半島,ロシア東部に分布する。日本では平地のイネ科の雑草間にふつうで,8~9月に成虫が見られる。日本には他にオビカワウンカAndes harimaensis,キガシラウンカKuvera flaviceps,ハスオビヒシウンカBetacixius obliquus,ヨモギヒシウンカO.artemisiaeなど9属約40種を産する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒシウンカ」の意味・わかりやすい解説

ヒシウンカ
Cixiidae; rhombic planthopper

半翅目同翅亜目ヒシウンカ科に属する昆虫の総称。いわゆるウンカのなかの一群。前胸背がきわめて狭くなり,むしろ中胸背が大きく菱形に露出するのでこの名がある。体長5~9mmと小型で,ウンカに似るが,後肢に可動式のがない。暗褐色のまだら模様をもつものが多く,側方から見ると前翅が背上にややそり上がり,また翅端部は丸い。頭幅はやや広く,前方には特に突出しない。顔には3本の縦に走る隆起線があり,中央隆起線上に第3の単眼をもつこともある。前翅の翅脈はウンカより複雑である。ヒシウンカ Pentastridius apicalisは,体長6~8mm,体は淡褐色で前翅が淡黄褐色半透明の種で,ヨシ (イネ科) にすむ。幼虫は白ろう分泌物におおわれ,湿地石下などにみられる。本州,四国,九州に分布する。 (→同翅類 , 半翅類 )

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒシウンカ」の意味・わかりやすい解説

ヒシウンカ
ひしうんか / 菱白蝋虫
rhombic planthopper

昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目ヒシウンカ科Cixiidaeの昆虫の総称、およびそのなかの1種。ヒシウンカ科はウンカ科に似ているが、後脚脛節(けいせつ)先端に可動距(けづめ)を欠き、頭幅がやや広く、とくに前方に突出しないなどの点で異なる。顔上の縦隆起線は両側と中央に3本あり、ときには中央隆起線上に3個目の単眼をもつことがある。前翅は透明のことが多いが、しばしば暗色部をもち、翅脈は細かく複雑である。前胸背は狭く、中胸背は大きく、菱(ひし)形を呈するのでこの名がある。熱帯、亜熱帯地方に多くの種が知られ、日本産は約35種が知られている。

 ヒシウンカPentastiridus apicalisは、翅端まで6~8ミリの比較的大形の種で、体は淡褐色であるが、雄では多少とも暗化する。雄の前翅翅端部は暗色となる。アシなどのイネ科植物に生息し、幼虫は体が白蝋(はくろう)分泌物で覆われ、湿った所の石の下などに群生することがある。成虫は7、8月に出現する。本州、四国、九州に分布する。

[林 正美]

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