ヒマ(その他表記)castor bean
Ricinus communis L.

改訂新版 世界大百科事典 「ヒマ」の意味・わかりやすい解説

ヒマ (蓖麻)
castor bean
Ricinus communis L.

トウゴマともいう。熱帯東アフリカ原産のトウダイグサ科の木質草本。草姿は大型で,茎は太く中空,1~3m。熱帯では多年にわたり生長をつづけ,高さ6mをこえる低木状になる。日本では冬に枯れるので一年草として扱われる。葉は掌状に切れ込み,径20~30cm,鋸歯があり,長い葉柄がある。日本では夏から秋に茎頂から長さ30~60cmの円錐花序を出し,基部には多数に分枝した花糸を有する雄花を,また上部には雌花をつける。果実は柔らかいとげにおおわれ,長さ2cmほどの長球形で,熟すと3裂し,中に表面はなめらかで暗褐色斑紋のある長球形の種子が3個入っている。古代エジプトで6000年前から利用され,日本には9世紀ころに中国から渡来した。現在の主産地はインド。発芽適温は25~35℃なので暖かな気候を好み,日本では4月中旬以降に播種(はしゆ)する種子の胚乳に30~50%含まれる油を絞って精製したものがヒマシ油で,下剤として使うほか,化粧品原料や工業用にされる。かつては航空エンジンの潤滑油としても利用された。種子はいって食用にすることもある。茎葉や果実まで赤い美麗な品種があり,これは花壇用とし,また果実をつけた枝を切花用にする。
執筆者:

種子は脂肪油を含み,瀉下(しやげ)薬とする。また,皮膚病に他の生薬と配合して外用される。種子は脂肪油のほかに毒性タンパク質リシンricin,有毒アルカロイドであるリシニンricinineを含み,それらの成人致死量はそれぞれ7mgおよび0.16gであるが,これらは加熱により分解する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒマ」の意味・わかりやすい解説

ヒマ
ひま / 蓖麻

トウゴマの漢名。種子をひまし(蓖麻子)といい、種皮を除いた仁(じん)は、ひまし油をとるほか、腫(は)れ物に外用したり、腫れ物の治療に用いる軟膏(なんこう)に加えたりする。

[編集部]

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百科事典マイペディア 「ヒマ」の意味・わかりやすい解説

ヒマ

トウゴマ,カラエとも。アフリカ原産のトウダイグサ科の植物。温帯では一年生で高さは2〜3m,熱帯では多年生で6m近くになる。葉は大型の掌状葉。果実は【さく】果(さくか)で,とげのあるものとないものとがあり,完熟した種子は蓖麻(ひま)子と呼ばれヒマシ油を製する。4月ころ播種,8〜11月収穫。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒマ」の意味・わかりやすい解説

ヒマ

「トウゴマ(唐胡麻)」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のヒマの言及

【レジャー】より

…この言葉は,許可されるという意のラテン語licereに由来し,なんらかの権威によって認可されている行動,状態,意識という意味である。日本では〈余暇〉〈ひま〉と訳されていたが,1960年の〈安保〉のあと,池田勇人内閣が推進した高度成長政策の展開期に流行語(1961‐62)となり,60年代には一種日本語化して,〈レジャー時代〉といったように,日常的に使われるようになった。70年前後には,週休2日制の一定程度の普及にあらわされるような産業構造,労働条件の変化,ジャーナリズムでの未来論ブーム,ヒッピー風俗に象徴される〈労働〉基軸の価値観の動揺,多様な新しい共同体(コミューン)づくりの模索等が相まって,〈余暇〉と人間の基本的な関係がまた新しく脚光を浴びてきた。…

※「ヒマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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