改訂新版 世界大百科事典 「ヒメクグ」の意味・わかりやすい解説
ヒメクグ
Kyllinga brevifolia Rottb.ssp.leiolepis (Fr.et Sav.) T.Koyama(=Cyperus brevifolius (Rottb.) Hassk.var.leiolepis (Fr.et Sav.) T.Koyama
カヤツリグサ科の雑草で,水田のあぜや川や池沼の岸の湿った土地に生える。全体緑色で高さ10cmくらいの細い一年草で,長く横にはった根茎の節から茎が立ち上がる。葉は1~2枚で茎の基部につく。7~10月,茎の頂に2~3枚の葉状の苞を有する1個の球状の花序をつける。小穂は多数あり,長さ2.5mmで,2~3個の花がある。果実は左右から強く扁平のレンズ形で,花柱には2個の柱頭がある。ヒメクグは日本全国と中国に分布するが,その基本変種であるタイワンヒメクグK.brevifoliaはほとんど全世界の暖帯から熱帯に分布する雑草であり,牧草になるし,根茎は感冒,痛み止めなどに漢方で利用される。
クグとはカヤツリグサ類の古い名称であるが,ヒメクグに近縁のカヤツリグサ類としては本州の南部から熱帯に分布する,それぞれ別属のイヌクグMariscus sumatrensis (Retz.) T.Koyama(=Cyperus cyperoides(L.) O.Kuntz.),ムツオレガヤツリTorulinium odoratum (L.) S.Hooper(=Cyperus ferax Rich.)や,ヒンジガヤツリLipocarpha microcephala Vahlがある。これらは直立した茎の頂に散形花序をつけ,むしろカヤツリグサ属Cyperusに近い外形をとる。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報