ヒヨドリバナ(その他表記)Eupatorium chinense L.var.oppositifolium (Koidz.) Murata et H.Koyama

改訂新版 世界大百科事典 「ヒヨドリバナ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨドリバナ
Eupatorium chinense L.var.oppositifolium (Koidz.) Murata et H.Koyama

温帯から暖帯にかけての比較的明るい疎林の中や,林縁,造林地などの草地に多いキク科多年草。地下茎は短くて太く,やや塊状に肥厚して多少木化し,1~数本の茎を叢生(そうせい)する。葉は対生し,長卵状楕円形から長楕円状披針形,先が尾状に長く鋭尖えいせん)する傾向が強い。葉の表面光沢がなく,短毛がまばらに散生する。裏面には全体に腺点がある。ときに葉の基部が2~3裂したり,種々の程度に羽状に分裂する。北海道,本州四国九州から朝鮮,中国中・南部にかけて分布する。利尿剤,胃腸薬として漢方で用いられている。ヒヨドリバナによく似ていて,葉が3~5枚輪生するヨツバヒヨドリE.chinense L.ssp.sachalinense (Fr.Schm.) Kitam.ex Murataは温帯から温帯上部の林縁や草地に生育し,分布はサハリン南部から北海道,本州,四国までで,九州にはない。西日本では高い山の上部の草地に限られてくる。山間部の湿地に多いサワヒヨドリE.lindleyanum DC.は長楕円状披針形で鈍頭,低い鈍鋸歯のある葉を対生する。葉は質がやや厚く,3行脈が目だつ。表面には光沢がなく,ちぢれた毛と腺点があり,裏面には腺点が多く,脈上に伏毛と比較的長い立毛がある。北海道,本州,四国,九州,朝鮮,台湾,中国東部,フィリピンベトナムに分布する。伊豆諸島とその周辺には葉が円く,両面多細胞からなる白色の長軟毛を密生したハマサワヒヨドリvar.yasushii Tuyamaが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒヨドリバナ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨドリバナ
ひよどりばな / 鵯花
[学] Eupatorium makinoi T.Kawahara et Yahara
Eupatorium chinense L. var. oppositifolium (Koidz.) Murata et H.Koyama

キク科(APG分類:キク科)の多年草。地下茎は短くて太く、やや塊状に肥厚して多少木質化し、茎を1本から数本叢生(そうせい)する。葉は対生し、長卵状楕円(だえん)形または長楕円状披針(ひしん)形で長さ6~18センチメートル、幅3~8センチメートル、裏面全体に腺点(せんてん)がある。8~10月、多数の頭花を散房状につける。頭花は数個の管状花からなり、白色でときに淡紫色を帯びる。痩果(そうか)は五稜(りょう)形、白色の冠毛がある。山地の比較的明るい疎林の中や林縁、造林地などの草地に多く生え、北海道から九州、および朝鮮半島、揚子江(ようすこう)以北の中国に分布する。名は、ヒヨドリの鳴くころに花が咲くことによる。近縁のサワヒヨドリとの雑種もあり、変異が多く、同定のむずかしい種である。

[小山博滋 2022年3月23日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒヨドリバナ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨドリバナ(鵯花)
ヒヨドリバナ
Eupatorium japonicum; thoroughwort

キク科の多年草。東アジアの温帯から暖帯に広く分布し,日本各地の山地のやや乾いたところに生える。茎は直立して1~2mの高さになり,短毛をかぶっていてざらつく。葉は対生し,薄質で長さ 10~20cmの広披針形,鋸歯縁で短柄を有し,両面にまばらに縮毛がある。晩夏から秋にかけて,茎の上部に散房状に白色または帯紫色を帯びた頭状花を多数密につける。各頭花は少数の管状花から成り,管状花の先端は浅く5裂する。果実は白色の冠毛をもつ痩果で,全体に腺点と毛がある。近縁種にサワヒヨドリヨツバヒヨドリ (四葉鵯)などがある。

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百科事典マイペディア 「ヒヨドリバナ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨドリバナ

キク科の多年草。北海道〜九州,東アジアの暖〜温帯に分布し,山地にはえる。茎は高さ1〜2m。葉は対生し,広披針形で薄く,毛があり,下面には腺点がある。8〜10月,茎の上部に筒状花からなる白色の頭花をまばらな散房状につける。近縁のヤマヒヨドリは葉が無毛で腺点もなく,頭花は9〜11月,密な散房状につく。日当りの湿地にはえるサワヒヨドリは葉の3脈が目立ち,ときに葉が3裂する。

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